悪魔な義理弟《ボディーガード》~ヤンキー校最凶犬男子の独占欲が強過ぎる~
「きゃあ!今なんか動いた!」
「櫂理君、歩くの早いよ。もうちょっとゆっくり」
「お願い、もっとぎゅってして!」
だめだ!
怖い!怖すぎるっ!
もう、恥ずかしいとかそんなこと言ってられないくらいにっ!
奥に進むにつれ、鏡の中で何かが動いたり、置物が動き出したり、白い紙みたいなのが飛び出したりと。息を吐く間も無く仕掛けが次から次へと襲ってきて。しかも、素足という無防備さが更に恐怖を増幅させ、私の精神は崩壊し、半泣き状態で櫂理君の胸の中に顔を埋めた。
「莉子、大丈夫。俺が守ってあげるから」
そんな半狂乱の私を、櫂理君は終始落ち着いた様子で宥めてくれて。学校に居る時よりも、“守る”という言葉が深く心に響いてくる。
なんだろう。
いつにも増して、櫂理君が凄く頼もしく見える気がする。
それに、服装の相乗効果もあって、なんだか大人の男性に包み込まれているような……
徐々に熱を帯びていく自分の体。
そして、恐怖で震えていた心が、段々と違う意味で震え始めてきた矢先だった__
「きゃあああああ!」
真っ暗な部屋の奥から突如現れた、長い髪を垂らした白い着物姿の女性。
両手を前に出しながら勢いよくこちらに向かってきて、思わず今日一番の悲鳴をあげてしまった。
__すると、次の瞬間。
目にも止まらぬ早さで、櫂理君が私の前に立ちはだかる。
その様が、まるで騎士のようで、不覚にも心臓が大きく跳ね上がった。
だけど、そう思ったのは、ほんの一瞬のこと。
櫂理君は女性の胸ぐらを勢いよく掴み上げると、反動で長い髪が床に落ち、そこには怯えた中年男性の姿があった。
「てめえ俺の前で莉子に近付こうなんていい度胸じゃねーか。覚悟はできてるんだろうな?」
「すすすすみません!ていうか、これただの仕事ですから!あああなたの彼女さんに手を出そうなんて、これっぽっちも思ってませんからっ!」
もはや、この光景はただの親父狩りにしか見えず。
先程の恐怖は綺麗さっぱり吹き飛ばされ、今では犯罪臭が漂う現場に危機感しか湧かない。
「櫂理君!通報されちゃうから、その人早く離して!」
とにかく、彼の暴走を早く止めなくてはと。怒気を帯びた声で一括すると、櫂理君は渋い顔をしながら、ようやく手を離してくれた。