悪魔な義理弟《ボディーガード》~ヤンキー校最凶犬男子の独占欲が強過ぎる~
__私は今、【呪いの家】と書かれた小さな家の前に立っていた。
ああ!
やっぱり!
なんで私って、こうも櫂理君に弱いの!?
あんなに、流されないと誓ったのに。
気付けば口が勝手に動き、あろうことか「一緒に行こう」と言った自分が今でも信じられない。
そんなトイレットペーパー並の意志の弱さに嘆いている間も、どんどん短くなっていく前の列。
そして、呪いの家から聞こえてくる悲鳴が徐々に大きくなっていって、思わず櫂理君の腕にしがみついてしまった。
「やっぱり、止めようかな……」
恐怖に押し潰され、ぽつりと溢れた弱音。
今から引き返しても、全然遅くはないけれど……
「それじゃあ、帰るか?」
「…………ううん。行く」
またもや櫂理君の残念そうな表情を前にして、呆気なく屈してしまう自分の口がほとほと憎い。
諦めて呪いの家に視線を向けると、かなりの完成度に思わず背筋が震えた。
マンスリーだから、もう少し手を抜いてくれてもいいのに。
そんなことは微塵も感じさせないくらい、まるで築五十年は経っているような壁の古さと汚れが凄くリアルで。
窓には赤い手形が点々と施されたり、玄関には盛り塩二つとお札が貼られたりと。
作り物だと分かってはいるけど、ここに入る勇気は全くない。
そうこうしていたら、ついに順番が回ってきてしまい。
櫂理君を先頭に玄関の扉を開くと、真っ先に目に飛び込んできたのは“ここで靴を脱いでください”という張り紙。
家の中は薄暗く、静まり返る空間が余計不気味な雰囲気を醸し出していて、私は涙目になりながら再び櫂理君の腕にしがみついた。
「莉子、大丈夫。ゆっくり行こう」
そんな私を宥めるように、私の体をぎゅっと抱きしめてくれる櫂理君。
いつもなら、公共の面前でのスキンシップは凄く恥ずかしいのに、今は不思議と気持ちが落ち着いてくる。
「……そ、それじゃあ、絶対に離れないでね」
「ああ。俺が莉子を離すわけないだろ」
そして、側から聞いたら、まるで恋人同士のような会話も平然と出来てしまう。
とにかく、櫂理君の温もりが心地良すぎて、このままずっと離れたくないと思ってしまうなんて。もう私の心は恐怖でどうかしてしまっているんじゃ……
「すみませーん。後詰まってるのでさっさと行ってくれませんか?」
すると、少し苛立った男の人のアナウンスが部屋中に響き、そこでふと我に返る。
危ない。
あと少しで櫂理君に全部持っていかれるところだった。
__そう思ったのも束の間。
こんなのは、ほんの序の口で。
お化け屋敷の中に入れば、それ以上の恐怖が私を益々狂わせていく。