悪魔な義理弟《ボディーガード》~ヤンキー校最凶犬男子の独占欲が強過ぎる~
橋本。
誰だそいつは。
これまで、男の話は一切してこなかった莉子が気になるなんて、一体どんな奴だ。
今日も今日とてボクシングジムでトレーニングに励む中。
未だ収まることのない怒りのせいか、いつもよりパンチ力が上がり、サウンドバッグを叩く音が部屋中大きく響き渡る。
「おー。今日はやけに精が出るな。てか、お前本当に伸び代すげーよ。真面目に大会出ないか?」
すると、その様子を隣で傍観していたトレーナーは突然真顔でそんな提案をしてきて、全くその気になれない俺は鼻で笑った。
「そもそも、俺が強くなりたいのは全部莉子のためだから。大会とかそういうの全然興味無いし」
そして、胸の内を隠すことなく堂々と曝け出す。
「お前中学になってもまだ姉さん好きなんて、本当一途な奴だよな。なんか……おじさんドキドキする!」
「おい。壊滅的に気持ち悪いから、それ止めろ」
スキンヘッドで体格が良く、普段は強面なヤクザみたいな顔をしているくせに。
人の色恋話になると、まるで噂好きの女みたいになるのはどうにかならないものだろうか。
でも、何だかんだ実力は確かなので、俺がここまで強くなれたのは、全部このおっさんのお陰だと言っても過言ではない。
莉子を守るために強くなると決めた時、このボクシングジムを見つけたのは、単なる偶然だった。
莉子には友達の紹介だって言ったけど、本当はそうじゃない。
たまたま通り掛かったところにジムがあり、単身で乗り込んで理由を話したら、色恋話好きなおっさんのツボにハマったようで。
俺の要求をあっさり引き受け、しかも会費は要らないと言ってくれた。
けど、その条件として俺の恋愛事情を教えることとなり、話に食いつく姿はなかなかに気持ちが悪い。
「……で、お姉さんに気になる人が出来たのか。どうするんだ?ここは潔く身を引くのか?」
「まさか。そう簡単に諦めるわけないだろ」
とりあえず今日のことをトレーナーに話したら、これまた興味津々な目を向けてきたので、その視線を鬱陶しく感じながらも、俺はキッパリと断言した。
……そう。
こんなことで諦めるなんて、絶対にありえない。
それに、莉子の意識が別の男に向いていたとしても、まだやれることはある。
そもそも、莉子は“弟”の俺にとことん甘く、何をやっても大抵のことは許してくれる。
だから、例え恋愛対象になれなくても、その特権を思う存分使っていけばいい。
それが、今の俺が出来る唯一の抵抗だから。