悪魔な義理弟《ボディーガード》~ヤンキー校最凶犬男子の独占欲が強過ぎる~
すると、不意に櫂理君の指が顎に触れた瞬間、無理矢理引き上げられ、視線を元に戻されてしまう。

「俺の顔そんなに見たくない?もしかして、あいつが好きなのか?」 

そして、今度はこれまでにない程の弱々しい表情を見せられ、居た堪れなくなった私は無言で首を横に振った。

「違う。そうじゃなくて、まだ混乱しているというか……ひゃ!」

話が拗れる前に今の心境を正直に話そうとしたのに。
それを遮るように櫂理君は突然私の首筋に唇を滑らせてきて、思わず体がぞくりと震えた。

「それなら、余計なことを考えさせないくらい愛せば、もっと俺のこと見てくれる?」

そう耳元で囁く櫂理君の声は、体の芯からとろける程に甘く響き、私から思考を奪っていく。


このままだと、また彼のペースに巻き込まれてしまう。


なんとか抵抗しようにも、両腕を掴まれているせいで何も出来ない。

もし、このまま彼を受け入れたら。

好きだと伝えたら、私は櫂理君にとことんなまでに壊されてしまうかもしれない。

姉弟の境界線を越えた向こう側の世界。
その先に触れたいような、触れたくないような。

これまで振り子のようにゆらゆら動いていた糸は、気付けばかなり脆くなって、彼の行動一つで今にも千切れてしまいそうになる。

そんな弱った心に追い打ちをかけるよう、櫂理君は私の額に自分の額をくっ付けてきて、妖しくも美しい目で捉えてくる。

「莉子、好きだ。絶対誰にも渡さない」

その上、まるで図ったようなタイミングで囁いてくる執着的な言葉が更に私を縛り付けて、もう何も考えられない。


すると、突然櫂理君のスマホの着信音が鳴り出し、はたと我に返った私は慌てて彼から顔を背けた。

けど、それを許さないと言わんばかりに、櫂理君の手が私の頬を掴み、再び視線を戻されてしまう。


「櫂理君、電話出ないの?」

「鳴らせとけばいいだろ」

一向に出ようとする気配がないので一応尋ねてみたら、やっぱり即座に跳ね除けられてしまい、綺麗な顔が再び接近してくる。

「ダメ!早く出てあげて!」

これ以上踏み込まれたら本当に取り込まれてしまいそうで。
そんな危機感に襲われた私は、咄嗟に空いている手で櫂理君の胸を押しのけ、強い口調で促した。

圧に押された櫂理君は軽く舌打ちすると、ようやく私から離れ、ポケットからスマホを取り出し、渋々電話に出る。


「なあ、わざとか?毎回お前はタイミング悪いんだよ」

怒りを露わにしているところを見た限りだと、どうやら電話の相手は圭君で間違いなさそう。

それから、暫く会話をしていると徐々に櫂理君の表情が険しくなってきて、通話を終了させた途端深い溜息を一つ吐いた。

「どうしたの?何かあった?」

何だか只事ではないような雰囲気に恐る恐る尋ねてみると、櫂理君の表情は直ぐにほぐれ、首を横に振る。

「いや、何でもない。悪いけど、ちょっと用が出来たから俺行くわ。続きはまた家でな」

そして、私の頭に優しく手を置いてから、最後に妖しく微笑んできた。

「え?続きって何……」


バタン。

いまいち彼の言っている意味が分からず問いただそうとしたら、逃げるようにさっさと部屋を出て行かれ、一人取り残された私は暫く呆然とその場で佇む。
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