悪魔な義理弟《ボディーガード》~ヤンキー校最凶犬男子の独占欲が強過ぎる~
その時、外から車の急ブレーキ音が聞こえ、まさかと思い扉の方に目を向けた直後。
「莉子!」
黒色のセダン車から櫂理君が降りてきて、こちらの方に駆け寄ってくる。
それに怖気付いた男は軽い悲鳴をあげると、咄嗟に体格がいい赤シャツ姿の男性の後ろに隠れた。
「おい。あいつらは一体なんだ……」
突然盾にされた男性は訳が分からないといった表情で、後ろに隠れている男子生徒に目を向けた矢先。
櫂理君の飛び蹴りが赤シャツ男のお腹に直撃し、その勢いで男子生徒もろとも後ろに飛んでいき、二人折り重なって盛大に地面に倒れた。
「な、なんだこのガキは!?」
その光景に怯んだもう一人のヤクザ風な男は一瞬たじろぐも、すぐに体勢を整えて櫂理君に襲いかかる。
けど、即座に反応した櫂理君は振り向きざま男の首元に肘鉄をくらわせ、男は痛みに悶えてその場でしゃがみ込んでしまった。
「莉子、大丈夫か!?」
隙を見て私の元へ駆け付けてくれた櫂理君。
その姿がとても眩しく見えて、今すぐにでも彼の胸に飛び込みたいけど、生憎手足を拘束されていて何も出来ない。
そんな私の体を両手ですくい上げ、櫂理君はお姫様抱っこをしながら私を一旦外へと避難させてくれた。
「莉子さん、怪我はない?」
「今縄切ってやるから待ってろ」
そして、入り口前で立っていた圭君と雨宮君の姿を見た途端、緊張の糸が解け、意図せず涙がぽろぽろと溢れ落ちてくる。
「みんな、来てくれてありがとう。凄く怖かった……」
それからは止めどなく涙が溢れてきて、私は嗚咽混じりに感謝の言葉を口にした。
「…………暫くの間莉子を頼む」
すると、いつもなら真っ先に私を抱き締めてくれるのに、なぜか微動だにしない櫂理君は静かな口調でそう呟く。
そんな彼の挙動に私は不安を覚え、顔を覗き込んでみると、思わず背中がぞくりと震えた。
それは、今までに見たことがない程の冷たい表情。
その瞳の奥からは並ならぬ憎悪が滲み出ていて、ついさっきまで希望の光が見えていたのに、今では黒いオーラを放っている。
…………怒ってる。
おそらく、過去一番に。
そう確信した私は、思わず生唾を飲み込む。
「ちょっとあいつら殺してくる」
それから、その場で固まる私をよそに、櫂理君は軽い口調でそう言い残すと、踵を返して倉庫の中へと戻っていく。
そして、扉が閉まってから数秒後。
倉庫からは激しい物音と共に断末魔のような叫び声が複数聞こえてきて、私達は何も聞かなかったことにした。