悪魔な義理弟《ボディーガード》~ヤンキー校最凶犬男子の独占欲が強過ぎる~
「いや、なんか俺も莉子さんに甘えてみたくなって」
……え?
普段の彼らしからぬ大胆発言に、一瞬自分の耳を疑う。
「いいよね、櫂理は好きなだけ甘えられて。俺もそんなお姉さんが欲しかった。だから、少しだけこのままでいてもいい?」
そして、耳元でそっと囁かれた圭君の甘い声に、体の奥がぞくりと震えた。
滅多に……というか、圭君がこんなに甘えてきたのは初めてかもしれない。
いつも櫂理君が私に甘えてくる時、とても冷めた目で見てくるから、てっきり呆れられているんだとばかり思っていたのに。
でも、高校一年という早い時期に一人暮しをしているし、やっぱり心細いのかもしれない。
もしかして、笑顔の裏には、寂しさが隠れているのだろうか。
もし、これが彼の本音だとしたら、なんだか切なくなってきて、胸の奥が少しだけ痛む。
「いいよ。それじゃあ、今だけ圭君のお姉ちゃんになってあげるね」
それならば、そんな彼の願いを最大限に叶えてあげようと。
まるで大型犬のように擦り寄ってくる圭君の頭を優しく撫でてみる。
__次の瞬間。
「きゃっ」
突然圭君にお姫様抱っこをされてしまい、咄嗟に彼の首元に勢いよくしがみつく。
「け、圭君!?」
そして、そのまま無言でリビングへと運ばれ、私は混乱しながら彼の名前を呼んだ。
けれど、一向に反応はなく、圭君はソファーの前で立ち止まると、私を寝かせるようにそっと下ろす。
「今度はどうしたの?どこか具合でも悪いの?」
なぜソファーの上に座らせれたのか分からず首を横に傾げると、これまで無表情だった圭君の口元が妖しく緩んだ。
「本当に莉子さんって可愛いね。そうやって簡単に騙されるんだ」
それから、悪戯な笑みを浮かべながら、色を含んだ眼差しをこちらに向けて、視線を合わせてくる。
「え?何が……ひゃあ」
彼の言っていることが全く理解出来ない私は、もう一度尋ねようと口を開いた直後。不意に覆い被さるように抱きしめられ、あろうことか圭君に右耳を食べられてしまった。
その瞬間、体がぞくりと震え、思わず変な声が漏れ出る。
「ちょ、ちょっと待って圭君!おおお落ち着いて!」
急変した彼の態度に思考が追いついていけず、肌に唇を滑らせる圭君を引き剥がそうと厚い胸板を押してみるも、ビクともしない。
一体何がどうなってこんな流れになったのか。
思春期の男子とはこんなものなのか。
これまでずっと紳士的に振舞っていた彼なのに、まるで獣のように襲ってくる状況が未だ信じられなくて、頭の中がパニック状態となる。
その時、突然圭君の動きがピタリと止まり、何やら小刻みに肩が震え、忍び笑いが聞こえてきた。
「やっぱり莉子さんって純粋過ぎて面白い」
そして、天使のような眩しい笑顔とは裏腹に、人を小馬鹿にした態度でソファーから立ち上がった。