悪魔な義理弟《ボディーガード》~ヤンキー校最凶犬男子の独占欲が強過ぎる~




それから、映画に没頭していると、あっという間にエンディングロールを迎え。劇場内が明るくなったので、そろそろ席を立とうとした時だった。

隣に視線を向けると、まるで心ここに在らずな表情で真っ暗なスクリーンを眺め続けている櫂理君。

もしかして、映画の余韻に浸っているのかな。
それにしては、なんだか目が虚ろな気がするけど……。


「櫂理君、映画終わったよ」

分かっているとは思うけれど、なんとなく不安に感じた私は念の為声を掛けると、櫂理君は「……ああ」と小さく返事をしてきた。

「どうしたの?もしかして、面白くなかった?」

いつもなら、観た感想をすぐ私に話してくるのに。
反応が薄いということは、お気に召さなかったのだろうか。


「ねえ、知ってる?話題の超怖いお化け屋敷が今期間限定でやってるの」

「素足で歩くやつでしょ。あれ私の友達がこの前行ったら怖過ぎてリタイアしたって」

「靴脱ぐとかエグ過ぎだよね。あたしも興味はあるけど挑戦する勇気ないわー。トラウマになりそうだし」


すると、突如後ろの席から聞こえてきた騒がしい女の子達の声。

こんな所にもお化け屋敷があるんだ。なんて、そんなことを考えながら何気なく会話を聞いていると、突然櫂理君の動きが機敏になり、一生懸命スマホで何かを検索し始めた。


その時点で、もう嫌な予感しかしない。



「莉子、次ここ行かない?」


そして、その予感は見事的中してしまい。
先程とは打って変わり、目をこれでもかと輝かせて私に見せてきたスマホ画面には、不気味な文字で【呪われた家】と書かれていた。


「む、無理!絶対無理!素足で行くなんて考えただけでも怖すぎる!」

いくら櫂理君の頼みとはいえ、出来ることと出来ないことがある。

特にホラー系は大の苦手なので、私は全力で首を横に振った。

「それなら、ずっと俺にしがみついていればいいから」

だけど、やっぱり櫂理君は簡単に引こうとはせず。
いつもなら大概のことは許しているけれど、こればっかりは譲るわけにはいかない。

「私、お化け屋敷本当にダメなの。だから、ごめんね櫂理君。今回は諦めてくれるかな?」

そして、真剣な表情で説得を試みたら、まるで親に叱られた子どものように、櫂理君の顔がしゅんとしてしまった。

「……そっか。わかった。莉子がそう言うなら、仕方ないな。期間限定って書いてあったから、ついテンション上がって」

それから、視線を足下に落として項垂れる姿に、心の奥がチクリと痛み出す。

「こっちこそ、ごめん。莉子がこういうの苦手なの知ってて誘って。あまり見ない設定だったから、めちゃくちゃ面白そうって思ったけど……諦める」

それから、まるで捨てられた子犬のような潤んだ瞳を向けられてしまい、直視することが出来ない。


お願い!
やめて!
そんな目で私を見ないでっ!


そう心の中で叫びながら、なんとか櫂理君の子犬顔を回避しようとするも。効果は絶大で、あんなに固かった心の防壁が徐々に崩れ始める。

たけど、ここで負けちゃダメと。
何度も自分に言い聞かせて、防御に徹した結果__
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