原始の湖畔、サファイアの瞳
出会い
 まだ言葉もない時代。

 人は本能のまま、ただ生きていた。
 飢えれば狩り、雨が降れば洞窟へ逃げ込む。

 群れを離れた少年もまた、獲物を求め、湖のほとりに立っていた。
 腰に獣の皮を巻いた、裸同然の姿。

 手には、鋭い石をツタで縛りつけた木の棒。
 これで魚を突き、獣を狩り、喉が乾けば湖の水をすくう。それが彼の日常だった。

『ガサガサ』

 背後の林で、小枝が爆ぜる音がした。
 少年は一瞬で身を低くし、息を殺す。石の槍を握り直し、音の主を睨み据えた。

 視線の先には、大きなオオカミが一匹。いや二匹三匹と、群れをなし身構えていた。
 ……少年はその中でも、身を低くし、一番狙いやすい位置にいる個体に石先を向けた。

 だが、違和感があった。オオカミたちの殺気は、自分ではなく、そのさらに先へと向けられている。
 少年の視線が、オオカミの鼻先をなぞるように湖畔へと滑る。

  そこには、水辺の草に紛れるようにして、一羽の大きな鳥がいた。
 泥に汚れ、岩に削られた世界で、それだけが信じられないほどに白く、静かだった。

(都合がいい。アレを囮にすれば、オオカミを仕留められる) 少年は石槍の柄を握りしめ、獲物たちが重なり合う瞬間を待った。
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