黒瀬部長は部下を溺愛したい

CASE:20 まだまだ足りない



 珍しく莉央が風邪をひいた。

「すみません……せっかくのお休みなのに……」

 ベッドの上でかすれた声を出す莉央に慧は静かに首を振る。

「何言ってんだ。俺が甘やかすチャンスだろ」

 そう言いながら、おでこに冷えピタを貼って、優しく髪を撫でる。

「はい、水。あと、プリン。好きだろ?」
「う……食べたい……」
「なら、じっとしてろ」

 スプーンで小さくすくって、莉央の口元に差し出す。
 されるがままに口を開くと、すぐにふわっと甘さが広がる。

「ん……おいしい……」
「そうか。食べられそうで良かった。しんどくないか?」
「はい……慧さんがいてくれるから……安心します」
「ならもっと甘えてくれていいぞ」

 そっと莉央の手を握って、額にキスを落とす。

「治るまで、俺が全部面倒みてやる」
「……ずるい」
「ずるい? なにがだ?」
「……そんなの、甘えてしまうじゃないですか……」
「だったらもっと甘えたらいい。俺としてはまだまだ足りないからな」

 慧の声は低くて優しくて、熱よりも心をとかす魔法のよう。

「…………」
「莉央?」
「慧さんのせいで熱、上がりそうです」
「………ふっ、それは……下がるまでここに居ればいい」
「もう……」

 人の温もりに触れて、じんわりと目頭が熱くなる。
 慧は莉央が食べきったあともずっとそばにいてくれた。

「莉央、風邪が治ったらデートにいこうか」
「はいっ……嬉しいです」
「良かった。断られたらどうしようかと」
「慧さんからのお誘いを断るなんてありえません」
「ふっ……なら行きたいところ、考えといて」

 ふわっと莉央のおでこにキスを落とす。

「はい!」

 莉央は頬を染めながらも満面の笑みで答えた。

To be continued
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