御曹司はただの同期のはずだったのに
「そして」

少しだけ体を離して、私を見る。

その目は、決意に満ちていた。

「俺は、父の前でおまえとの結婚を告げる」

「え?」

思わず声が出る。

「大丈夫なの?」

現実が、頭をよぎる。

社長である父。会社。婚約の話。

全部が、一気に押し寄せる。

「必ず、おまえを認めさせる」

理人は迷わなかった。

その言葉だけで、すべてを背負う覚悟が伝わってくる。

(……本気なんだ)

胸の奥が、じんわりと熱くなる。

怖いはずなのに。

それ以上に、信じたいと思ってしまう。

その時、社内アナウンスが流れた。

「東條部長、社長室へお越しください」

空気が、変わる。

理人が、私を見た。

「行ってくる」

「……うん」

頷くしかできない。

でも、その背中を見送るだけじゃ終わらない。
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