御曹司はただの同期のはずだったのに
理人も同じことを思っていたのか、ふっと笑う。

そのまま、じっと私を見つめてくる。

「……なに?」

少しだけ視線を逸らす。

「いや」

理人が、真顔で言う。

「綺麗だなって思って」

「なにそれ」

思わず笑う。

「嘘じゃないよ」

まっすぐな声。

その言葉に、胸がじんわりと温かくなる。

料理が運ばれて、時間がゆっくりと流れていく。

穏やかで。幸せで。

――だからこそ。

理人が、静かに手を伸ばした時、空気が変わった。

小さな箱。テーブルの上に置かれる。

「……玲奈」

少しだけ緊張した声。

でも、その目はまっすぐだった。

「俺と、結婚してくれ」

一瞬、時間が止まる。

「……え」

言葉が出てこない。

「正式なプロポーズ」

理人が、ゆっくりと言う。

逃げ道なんてない。
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