御曹司はただの同期のはずだったのに
その言葉に、胸が少しだけ高鳴る。

――そして、夜。

連れてこられたのは、眩しいほどに洗練されたレストランだった。

ガラス越しに見える夜景。

落ち着いた照明。静かに流れる音楽。

(……すごい)

思わず、周りを見渡してしまう。

「こういうところに来るの?」

「たまにね」

理人が軽く答える。

「家族と一緒に」

その言葉に、少しだけ現実を感じる。

(……やっぱり)

この人は、そういう世界の人なんだ。

でも、今は違う。

「今日はちゃんとしたデートだな」

理人が、少しだけ照れたように言う。

「そうだね」

微笑む。

「そう思うと、なんだか不思議」

今までの私たちは、こんなふうに外で並んだことがなかった。

いつも部屋の中で。

閉じた世界で。

「外食なんて、したことなかったからな」
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