御曹司はただの同期のはずだったのに
小さく、でも確かに届く声。

思わず笑ってしまう。

「今までで一番?」

少しだけからかうと、理人は迷わず頷いた。

「当たり前だろ」

その一言に、胸がじんわりと温かくなる。

隣に並ぶ。距離はもう、何も邪魔しない。

「玲奈」

改めて、名前を呼ばれる。

その声は、あの時と同じ。

でも、もう揺れていない。

「ずっと俺のそばにいてくれ」

シンプルな言葉。

それなのに、全部が詰まっている。

私は、迷わなかった。

「あたりまえじゃない」

自然に、そう答えていた。

もう、疑うことなんてない。

理人が、少しだけ笑う。

そして、そっと顔を寄せてくる。

触れるだけの、やさしいキス。

それなのに、胸がいっぱいになる。

会場のざわめきも、光も、全部遠くなる。
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