御曹司はただの同期のはずだったのに
「玲奈……」

何度も名前を呼ばれて、胸がいっぱいになる。

重なる呼吸。ほどけていく感覚。

やがて、すべてが満ちていく。

「もうだめ……理人、離れないで……」

「玲奈……くっ……」

その瞬間、押し寄せてきた波に、すべてをさらわれた。

そのまま、しばらく動けなかった。

静かな夜の中で、二人の呼吸だけが重なっている。

抱きしめられたまま、目を閉じる。

温もりが、離れない。

(私は、この人を好きになっていいの?)

答えは、まだ出ない。

けれど。

もう、戻れないところまで来ていることだけは、はっきりと分かっていた。

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