狼上司が執着するのは
「とにかく、上司と寝るとかありえませんから。万が一何か起きたら仕事辞めてやる」

「確かに酔いに任せては卑怯ですね」

「結局お持ち帰りする気じゃないですか」

「手は出してないでしょう」


頬に触れていた藤浪の手を引き剥がし、妙な浮つきを鎮めるように深呼吸をする。
もう一言くらい注意してもいいと思ったが、藤浪はもうその気はないのか立ち上がった。

しかしとっさに藤浪の服の裾を掴んで私から引き止めてしまった。
いくら狂犬でも世話を焼いてもらった相手に、このままはいさよなら、は後味が悪い。


「あの、奢ってもらった挙句迷惑かけたし、そういった方向性以外で何かします」

「そういった方向性、とは?」

「言わせないでください察して!」


セックスという単語をオブラートに包んだら言及してきたため、必死の形相で察してくれと訴える。

その顔がおもしろかったのか、藤浪は普段下がりっぱなしの口角を上げてうっすら笑ったように見えた。
すぐ無表情に戻ったから気のせいかもしれないけど。
< 20 / 32 >

この作品をシェア

pagetop