狼上司が執着するのは
「別にどう思われていようと構いませんが、もうひとつ頼み事があるので聞いてくれますか」


藤浪はあまり気にしていない様子で助かった。しかし、もうひとつお願いしたいことがあるらしく、私は背筋を正した。


「いったいなんですか」

「個人的に葉山さんと仲良くなりたいです」


この男、何を言っているのだろう。
泣く子も黙る毒舌狼と、血気盛んな狂犬では馬が合うはずがない。

今は私が酔っていて、なんでもオーバーリアクション気味に受け答えするから楽しくて気が合うと勘違いしているだけだ。
それともこれも冗談のつもりなのだろうか。

藤浪の生態は理解不能だ。
仕事中の朴訥な藤浪と、仲良くなりたいなどと発言した目の前の男は果たして同一人物なのか。

私は一旦落ち着くために息を吐きながら背中を丸めた。


「あなた、本当に藤浪課長ですか……」


思わず問いかけると、藤浪は再び腰をかがめて視線を合わせる。その瞬間、藤浪の口がゆっくり弧を描いた。


「ええ、葉山さんが大嫌いな一匹狼の毒舌上司ですよ」
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