狼上司が執着するのは

02

藤浪のパワハラが改善している一方で、私は違う問題に悩まされていた。


「葉山さん、今日空いてる?」

「空いてません」


この前、私に散々文句を言ってきた渡辺さんから、退勤時間の度にサシ飲みの誘いが連日続いている。
なにか裏がありそうだから、かぶりを振って断っているけどさすがにしつこい。

2年先輩、29歳の渡辺さんは藤浪ほどではないが顔がいい。
トーク力もそれなりにあるからコロッと騙される女もいるらしい。

けど、藤浪のおかげで審美眼が鍛えられた私からすれば大したことない。


「いい加減この前のお詫びさせてよ。八つ当たりしてごめんね」

「謝罪は受け入れますがお詫びはいりません」

「まあまあ、そんなこと言わずに。奢るから」


腹立つな、嫌がってるの分かってるなら引き止めるなよ。
だいたい、つい最近まで琴梨ちゃんを誘ってたくせに。


「琴梨ちゃんは諦めたんですか?」

「あの子ガード固いんだよ。飲み会終わりは絶対彼氏が迎えに来るし」

「でしょうね、渡辺さんみたいにしつこく誘ってくる人がいたら彼氏くんも気が気じゃないですよ」


彼氏持ちの女をしつこく誘う男とか、その時点で気持ち悪い。
俺なら落とせるって思ってるおめでたい頭にも嫌気がさす。

さすがにそこまで言うとプライドを傷つけて厄介なことになりそうだから言わないけど。

渡辺さんには私の顔は相当不機嫌でブサイクに見えていることだろう。
今にも噛みつきそうな鼻息の荒いアラサー女を誘うヒマがあったら、マッチングアプリでちょうどいい女引っかけなさいよ。
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