狼上司が執着するのは
「渡辺さんのせいで胃のあたりがムカムカする……」


藤浪のおかげで解決したとはいえ、胸の奥にわだかまる不快感は消えない。
すると藤浪は腕時計を見て、それから私の顔に視線を滑らせた。


「葉山さんのストレス発散のためにに飲みに付き合おうと思ってましたけど、気持ち悪いならやめておきますか」

「いいえ!精神的なやつだから関係ないです!飲むに決まってます!」


たまにはいい提案をしてくれるじゃないか。
私は意気揚々と拳を突き上げ、藤浪と肩を並べて飲み屋街に出向いた。


「酔いすぎですよ、楓乃子さん」


一軒目の大衆居酒屋で、餃子をつまみにビールを飲みすぎた。
藤浪は私の真っ赤な頬を見て笑っていた。
相変わらず息を飲むほど綺麗な笑みだ。

じっと見つめていると「何か?」と首を傾げられた。
しかし見とれていましたなどと言い切れず、別の受け答えをすることにした。


「私もまさかビールでこんな酔うと思ってなかったんです。これは全部渡辺さんから受けたストレスのせいです」

「今度からはストレスをため込む前に俺に相談してくださいね」

「私がいなくなったら課長が困りますもんね」

「ええ、困りますね。もっと楓乃子さんと仲良くなりたいのに」


仕事に支障を来すから困るだろうと言ったつもりだったが、仲良くなりたいと笑う藤浪を前に返答に窮して分かりやすく動揺してしまった。
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