狼上司が執着するのは
「きっと期待はずれだから、そんなに興味があるなら先に説明しておこうと思って」

「期待はずれ?」

「私、セックスでイケたことないんです。私自身痛いだけで反応も薄いから、私を抱いても興醒めすると思います」


この悩みを他人に打ち明けるのは藤浪が初めてだった。
明け透けに暴露してしまったのは、藤浪なら茶化さずに話を聞いてくれると思ったから。

とどのつまり藤浪は真面目人間なのだ。
口も堅いだろうし、相談相手にはうってつけ。

予想通り藤浪は表情をほとんど変えず、片手に持っていた焼酎の入ったグラスを飲み干した。
喉仏が動くのが見えて、その色っぽさに目が離せない。


「元カレが下手だっただけでは?」


近くを店員が通りかかったのに、藤浪はおかわりの焼酎ロックを頼まず私に向き合った。


「誰としても痛くて気持ちよくなれなかったから、関係ないと思います」

「経験人数は?」

「えっと、3人くらい?」


3人とも大学時代に告白されて付き合った男たちだ。
みんなそれぞれ過去に女がいたから、決して下手ではなかったと思う。

だけど私は痛いばかりで、全然気持ちよくなれなかった。
最後に付き合った男とセックスした時には、痛みに耐えていたらマグロだって言われて傷ついた。

“楓乃子って反応ないっていうかマグロだよね”

あの発言に傷ついて、それ以来していないから5年は誰にも体を許していないことになる。
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