悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
面倒な相手に見つかったと思いながら、努めて穏やかに関屋成史に話しかける。
「すみません、これから外出なもので失礼します」
「なんだか色々と嗅ぎ回っているようじゃないか。私の捜査に不満があるようだねぇ」
「何のことでしょう?」
「あまりこんなこと言いたくはないんですが――、勝手な真似はするなよ」
関屋は頼久の耳元で低く囁く。
「これは忠告だ。己の身の振り方をよく考えるんだな」
「……ご忠告ありがとうございます」
頼久は眉根一つ動かさず、踵を返す。
その態度が気に入らなかった関屋は思い切り舌打ちした。
「美澄の姉と結婚までしたそうだな」
「……それが何か?」
つかさの話を出され、思わず足を止める。
「俺としてはお前が身内にならなくて良かったが、あまり勝手な真似ばかりしていると嫁の身まで危ういんじゃないか?」
関屋がどこまで知っているのかわからないが、何を言われようとも屈するつもりはない。
「ご安心を。妻のことは何があっても守りますから」
「チッ」
絶対に挑発に乗らない頼久に、関屋は苦虫を噛み潰したような表情で睨み付けていた。
今度こそ頼久は関屋に背を向けて立ち去る。
頼久は決して表情を崩さなかったが、密かに拳を握り締める。
(つかさには指一本触れさせない)
そして、事件について全てを暴く。
絶対に逃さないという闘志を静かに燃やした。