悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


「よろしくお願いします」
《任せな。ところでより坊、俺に話してないことあるだろ?》
「捜査に関する件はお話していると思いますが」
《ちげーよ! 結婚しただろ!》


 ああそっちか、と頼久はメガネを押し上げる。


「はい、先日籍だけ入れました」
《なんでそんな大事なこと話してくれねーんだ。水臭いじゃねーか》
「すみません。色々バタついている時で先に籍だけと思い、まだ祖父たちにも報告していなかったもので」
《マジかよ。大丈夫なのかそれ》
「多分」


 多分大目玉を食らうことになるが、祖父に話した瞬間結婚したことが一気に広まり色々な意味で面倒なことになる。
 特に母方の六条の祖父は孫が結婚する度にお祝いだの何だの、挙式は任せろなどやたらと張り切るので諌めるのが大変なのだ。


「今は事件に集中したいので」
《ったく、お前のワーカーホリックに付き合わされる嫁さんは大変だな》


 その妻が美澄要の姉だと知ったら松丸はどんな反応をするのだろうか。


《とにかくおめでとう。落ち着いたら祝わせてくれよ》
「ありがとうございます」
《それじゃ、また連絡する》


 松丸との通話を終え、そのまま外出しようとしたところを誰かに呼び止められる。


「おや、これはこれは永瀬検事」


 この芝居がかったような喋り方、すぐにピンときた。


「関屋検事、お疲れ様です」
「お疲れ」


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