悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


 笑いながらタルトをパクパクと食べ続けているので、思わずムッとした。


「いや、わかってないだろう」


 普段ポーカーフェイスな頼久の些細な変化には気づくくせに、昔から頼久の好意にだけは全く気づかない。
 こんなにはっきり言っても伝わらないとは思わず、頭を抱えたくなった。

 タルトを綺麗に平らげた頼久は立ち上がり、つかさの前に立つ。


「……何故わからないんだ」
「えっ……んっ」


 ポカンとしているつかさに顔を近づけ、その唇を塞ぐ。
 梨の爽やかな甘さとカスタードクリームのまろやかな甘さが頼久の唇にも伝わる。


「んんっ」


 角度を変えてもう一度口付け、つかさの唇に付いていたタルトの欠片を舌で絡め取る。
 顔を離すと、目の前でつかさは呆けて固まっている。
 腑抜けた表情ですら愛おしいと思った。


「――わかったか?」
「……えっ」


 まだ呆けているつかさに念を押すように、じっと彼女の瞳を見つめる。


「言っておくが、誰にでもこんなことはしない。つかさだからするんだ」
「……へ」
「いい加減僕のことを男として見てほしい」


 そう言った直後のつかさの顔を見て、三度目の口付けを堪えたことを褒め称えたいと自分で思った。


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