悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
形は歪だが味は美味しく、ついフォークを持つ手が止まらない。
だがつかさはタルトに手を付けず押し黙っている。
「食べないのか?」
「……頼くん」
「ん?」
「これから十月十七日は毎年タルト作るね」
つかさは真剣な表情だった。
「私にできることなんてこれくらいしかないけど、毎年一緒に梨タルト食べよう。そうしたら絶対忘れないし、寂しくないよね」
「……毎年作ってくれるのか」
「一応その、あなたの妻なので……」
つかさは恥ずかしそうにモゴモゴと呟く。
「来年はもう少し上手に作るから」
そう言って自分の梨タルトをパクッと食べた。「味は悪くないかも」と安堵している。
「僕はずっと、つかさのそういうところが好きだった」
「え?」
「君の思いやりがあって優しいところが、ずっと」
ほとんど無意識のうちにこぼれ出ていた。
頼久の気持ちに寄り添おうとしてくれる、彼女の優しさに何度も救われてきた。
つかさは一瞬大きく目を見開いたが、すぐに笑顔になる。
「ああ、幼なじみとしてって意味ね。わかってるって」