青春恋愛ミッション

第2話 恋の理解者

 でも彼には恋の理屈は十分理解できていた。

 恋の力はどこからかやってきて、その魔力は科学では解明できない謎の現象なのです。

 ある日偶然やってきて二人が恋に陥るのは、経験者ならわかる不思議な体験です。

 「あら、どうかしたの」
 国語の教師の「友恵」先生がこうたの様子を伺っていた。
 「失恋ね!」
 「私にはすぐわかるわ。」
 「恋の悩みがあったらいつでも相談に乗るわよ」

 友恵のブラウスの襟元の白いリボンが、こうたを優しく包み込み、心の愛情を語るかのようである。

 「あの女子生徒って、いい年頃なのに恋を知らないのかしら」
 「もっと大人になれば、こうた君の心が手にとるようにわかるはずよ」
 「こうた君の方が今は大人ね」

 こうたは「友恵」先生の包容力と大人さに憧れか、それと区別のつかない淡い何かの感情を持ち始めている。

 「優子の写真は伏せて、定期入れの写真、明日から友恵先生のにしよう」

 そう思い、一言切り出した。

 「先生、写真一枚撮らせてもらえませんか?」
 「いいわよ」

 「どんなポーズがいいかしら」
 「先生ね、20歳代の時、モデルの候補になったことがあるのよ」

 「それは驚き、そうなんですか!」

 友恵先生は案外素直に写真撮影を受け入れてくれた。

 「そちらは逆光になるので、もうちょっと位置を変えてください」
 両手でフレームを作り、写真の構図を決める「こうた」である。
 逆光に掛かる「友恵」先生のふわっとした長い髪が、キラキラと光って新鮮さを演出していた。

 こうたの青い携帯電話のカメラの焦点を友恵先生に合わせた。
 友恵先生の今日のコスチュームはブラウスの襟元に白いリボンのついた深紅のジャケットに
 白いスカート姿である。
 少し友恵先生の存在が眩しく思えるのだが、それは何を意味するのかは誰もまだわからなかった。

 「はーいそのままで。」
 「はい、ポーズ!」
 「カシャ!」(カメラのシャッター音)

 なぜ「優子」が男子じゃなくて女生徒を好むのかは内心、普通じゃないと感じている、こうたである。

 そんな優子の影響でこうたのこころの流れは友恵先生に偏り始めている。

 「女生徒たちって今こそが、人生の中での一番の盛りなのよ」

 「社会に行けば、壮絶な競争の連続よ」

 「だから、女生徒って、同性の友達同志は、異性の恋人よりも結びつきの強い見えない糸で結ばれているの」

 「私もそうだったわ」

 「ああやって、無邪気な愛想ではしゃく姿が私には心地がいいわ」

 「あの子たちを見ているとなぜかどこか心の箍(たが)が外れた気がして若くなった気がするの」

 「優子さんをわかってやって」

 「何となくわかります」

 「でも、優子さんを諦めません。」
 「そっとしておくと、また運気や運勢が変わるものよ」
 「それで、今は運勢は今は少し優子さんから離れているの」
 「それって!!」
 「運気って誰でにもある天秤にも似たような存在ね」
 「そのバランスが変わっていつも動いている」
 「誰と誰を引き寄せるのかは、星座しか知らないのよ!!」

 数万年前から存在している、ある星座の力学は、今になって彼らを導きつつあるのか。
 しかし見えない恋の力学はたやすく変えられてしまうかもしれない、儚くて脆い存在のようである。

 見えない恋の力学は法則を超えた力を彼らに与え始めているようだ。

 それぞれの個性や感情は、互いの運命を変えるべく、大きな華を開かせ咲き誇り、時代を超えた恋の力学を展開する人生劇の演出なのです。

 二人の目の前には、舞台の照明がダウンライトに切り替わっているステージに、座席だけが影を落として、5月の土曜日の練習の終わりを告げている。
 ちょっとした5月の土曜日の昼下がりのフィナーレであった。

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