『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 仕事柄、海外とのやりとりが多い航生は、よくオンラインで現地とミーティングをしている。日曜の午後である今も小一時間ばかり、仕事部屋に籠っていたのだ。

「お疲れ様、お母さんから。叔父さん謝りに来たんだって」

「そうか、それはよかったな」

 航生は落ち着いた様子でソファーに腰掛ける。

「航生君が業者を使って探してくれたんだよね。ありがとう」

 以前航生は両親に、伝手を使って叔父を探しだすと約束してくれていた。

「たまたま人探しの情報に強い調査会社を知っていて、相談しただけだよ。見つかったあとは脅し……じゃなくて、心を入れ替えて働くように就職口を紹介するように依頼しておいたけど」

 なんでもないような口ぶりだが、きっと相当の手間と費用がかかっているはずだ。

「……なにからなにまで、ありがとう」

 隣に座りながら心からの感謝を伝えると、航生はすかさず肩を引き寄せた。

「夫として当たり前だ。なにより俺が、大事な紗月と紗月の家族にはなんの憂いもなく毎日を過ごしてほしかったんだよ」

 お互いの想いを確かめ合い、本当の意味で夫婦になってから約一か月。彼との毎日は、順調そのものだった。
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