『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
《島くん、昔とはだいぶ見た目が変わってて、見違えるほどのイケメンになってたらしいよ。その子も初め島君だって気づかなかったって》

(……まさか……まさか……でも……っ)

《あの島君がイケメンってイメージ湧かないけどね》

 震え始めた指先で、もう一度OGセラミックのサイトを確認する。そこには専務取締役として〝大須賀理仁〟という名前も掲載されていた。

「――おはよう」

「わぁっ!」

 背後から突然声を掛けられ、紗月の肩がびくりと跳ねる。その拍子に手元から滑り落ちたスマートフォンが、柔らかな絨毯の上に音もなく落ちた。

「お、大須賀さん」

 振り返ると、バスローブ姿の大須賀が立っていた。彼はゆっくり屈んで紗月の足元のスマートフォンを拾い上げる。

「うちのホームページを見てるってことは、もう気づかれたか」

 大須賀は画面を一瞥すると、それを紗月に差し出した。声も表情も落ち着いていて、焦りや動揺は感じられない。一方の紗月は、胸の奥がざわつき、平静を装うことすらままならない。

「大須賀さん、あなた、名前……」

 受け取りながら、紗月はなんとか声を絞り出す。すると、彼は軽く息をついた。
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