『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
『島君って社長の息子だって話、紗月は知ってたの?』

 ホームルームが終わると麻由がこっそり話しかけてきた。

『ちょっと噂になってるのよ。島君がOGセラミックの社長の息子で……しかも愛人の子だって』

 驚く紗月に麻由はいっそう声を低くした。

(その話、島君は知られたくなかったはずなのに……どうして)

 彼が隠していたはずのプライベートは、いつの間にか学年中に広まり、母が病気らしいという噂まで立ち始めた。

 それから数日たっても航生は登校してこない。彼と一番仲の良かった紗月はクラスメイトに真偽を問われたが、そのたびに『知らないし、噂話はよくないよ』と受け流し続けた。

 面白半分に噂されている現状を知ったら航生はきっと傷つく。胸を痛めながらも、彼に連絡を取る勇気はなかった。

 新学期が始まって一週間後、航生が登校してきた。クラスメイトたちが遠巻きに見守る中、彼は静かに教室へ入ってくる。

 久しぶりに見るその姿は、顔を伏せているにもかかわらず、人を寄せつけない気配だけが際立っていた。航生はまっすぐ紗月の机へ向かい、目の前でぴたりと足を止めた。

『永井、最低だな』

『島く……』
< 68 / 235 >

この作品をシェア

pagetop