主人公なんかじゃない

5・リカコは大切な人なのに①

 『カラリス☆ステージ!』の世界に行けない日々。もう、一週間経過したんだけど!
 しかも、『カラリス☆ステージ!』を読むこともできない。読もうと本を開いたら、だれもいないカラリスのシェアハウスに飛んでしまう。勝手に家にあがりこむのは、よくないよね。
 私の唯一の趣味である、『カラリス☆ステージ!』が読めないなんてー!
 物語の中に入れるのはうれしいけど、『カラリス☆ステージ!』は一生読めないってこと? それはとっても困る! 暗記するくらい読み込んではいるけど、それとこれとは別!
 ところで、カラリスは一週間くらい家にいないって言っていたけど……それっていつのこと? 詳しく聞いておけばよかったぁー。
 現実のアイドルなら、調べればライブの予定くらいはわかるのに。

「なんか、さいきん元気ないね」

 休み時間、リカコが話しかけてくれる。

「ちょっとね……」

 理由は言えない。適当にごまかした。

「明日は土曜日だし、どっかでかけない? あたしおやすみなんだ」

「うん、行きたい!」

「月曜日から、ロケとか撮影で一週間くらい学校に来れないんだ。だから、たっぷり遊ぼう!」

 忙しいリカコと土曜日にじっくり遊べるのはうれしい!

「どこ行こうか? 原宿とか?」

「はらじゅく……」

 中学生だけで原宿に行くのは、ちょっと怖い。リカコは仕事のためにしょっちゅう都心に行くし、原宿なんて行きなれた場所ではあるんだろうな。
 私は、リカコとおしゃべりできるだけで、じゅうぶん楽しいのに。
 私とリカコは、小学五年生からの友だち。そのときリカコはモデルではなかったんだけど……中学に入ってモデルデビューしたらすぐに人気者になっちゃったんだ。
 さみしい気持ち。みんなにかわいいって言われてうらやましい気持ち。いろいろある。けど、リカコひとりで大人になっていっているあせりが最近はいちばん大きい。
 本の世界に頼って、架空のアイドルを応援している私って、子どもなのかなって。

「どした?」

 リカコが、ふしぎそうに私を見る。縮毛矯正して染められた明るい色の髪、プロの手で整えられた眉、すっぴんでもかんぺきにかわいい目や鼻や口。見た目も中身もおとなっぽくて、正義感も強い、自慢の友だち。
 赤染くんも、リカコに会いたいんじゃないかな……。だって、主人公はリカコだもの。

「えっと……おこづかいピンチで」

「そうなの? まーあたしも今月はピンチかも。いくら働いてもおこづかい増えなくてさ。親がぜんぶ管理してくれてるからね」

「おこづかいが増えないなんて、お父さんみたいなことを言うんだから」

「あはは! ほんとだよね、オヤジ化してきてるよ~」

 でーん! と、ウエストをたたいた。
 リカコの、このさっぱりした性格はずっと変わらないし、ずっと好きだなって思う。

「じゃ、マック買って、眞緒んちで食べながらゲームでもしよ!」

「うん、そうしよ!」

 いつもの遊びを提案されてほっとする。
 中学生になっても、高校生になっても、私たちはきっと変わらないでいられるよね。
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