これは果たして恋なのか。

宵の薄雲

部活を終え学校から帰宅すると、珍しく父が出迎えた。
「おかえり雛菊。今日はハンバーグだって。」
…え、本物?
「お父さん!?どうしたのこんな時間に。珍しいね!」
「まあたまにはと思って。」
あははと照れたように笑う父に、私も喜びが込み上げた。父は夜遅くまで仕事があるので、一緒に過ごせる時間は貴重なのだ。
「一緒に夕飯とか何ヶ月ぶりだろー!」
「ああ、いつも迷惑かけてごめんね。」
途端にしゅんとした父に、慌てる。
「そういう意味でいったんじゃないよ!迷惑なんてかかってないし。私たちのためだってわかってるから。」
「ひ、雛菊…!」
父の瞳にじわっと嬉し涙が湧いた。何歳になっても父は涙脆いのだ。思わず笑っていると、台所から夜宵さんが出てきた。彼女は父の再婚相手であり、蒼の母だ。
「ひなちゃんおかえりなさい。あら、碧さんったらどうしたの。」
「雛菊がいい子過ぎて涙腺が…。」
「あらあら」
夜宵さんがころころ笑う。わたしも笑って挨拶を返した。
「ただいまお母さん。蒼ももうすぐ帰ってくるよ。今日ハンバーグなんでしょう?楽しみ!蒼もきっと喜ぶね。」
「だといいわねえ。」
二人でこっそり笑っていると、玄関の扉が開いた。
「ただいまんもすー」
噂をすれば。ハンバーグが大好物の蒼くんだ。
「おおっ。超タイムリーじゃん」
「え、何が?」
きょとんとした蒼に三人で噴き出すと、案の定拗ねられてしまった。さっそくご飯にしましょうかと微笑んだ夜宵さんに従い、みんなで食卓を囲う。
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