これは果たして恋なのか。
“ごめんね蒼くん。うちの雛菊はなんというか、へそを曲げちゃってて…。こんなことは珍しいんだけどね。いずれ出てくると思うから。”

なんとストライキだった。まあ気持ちはわかる。
 この話に否定的な感情を持っていたのが自分だけではないと知って少しほっとした。

それから数分後、あんなに気になっていたのに”お姉ちゃん”は俺の頭の片隅に追いやられた。

 その原因は、庭だ。
 家の敷地内に、子供心をくすぐる立派な庭があったのだ。宮廷の庭園かという程に広い庭は、小さい俺に”探検したい!”といわせるほどのものだった。

誠さんに了承を貰い、探検すること約十分、俺は見事道に迷った。
 でもしょうがないと言えるだろう。
 その庭には小学生を夢中にさせる様々な花や木、おまけに虫もいた。

自分が迷子になっていることに気づいて途方に暮れていたとき、横にあった木の枝が揺れた気配がした。反射で振り向くと、”何か”が落ちてきた。

それは可憐な少女だった。

驚きで声が出なかった。

 木の上から地面に危なげなく着地した少女は、俺を見つめる。黒く大きく、輝く瞳で。

風が吹く。

花びらが舞う。

柔らかな、長い黒髪がなびく。

天使かと思った。鼓動が早くなって、頬が上気する。
少女は俺に微笑んだ。

過去に戻れるなら、自分に忠告してやりたい。

そいつに騙されるなと。
  その女は、今お前が思っているよりもずっと性格が悪くて、どんくさくて、うるさくて、だらしなくて、
 
 何百倍も愛おしいと。
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