これは果たして恋なのか。
◼︎◼︎◼︎

校外学習の翌日。
目が覚めると、俺は己の体の異変に気がついた。

やけに体が重く、頭がキリキリと痛む。喉に痛みを感じて口を開けると、ゴホゴホと濁った咳が出た。

間違いなく風邪だろう。
最悪だ。
自覚した途端、余計に体が重くなった気がした。学校に欠席連絡をしようと思えど、体が動かない。
これは思ったより重症かもしれない、と思いつつ、俺の意識は薄れていった。

***

「あ、蒼。起きた?」
次に目が覚めると、ベッドの傍らに雛菊がいた。
なんで、という言葉の代わりに激しい咳が出た。起きあがろうとした俺を、雛菊が制す。

「あーもう。大人しく寝てなさいよ。学校には私が連絡しといたから」


そう言って額に添えられた氷枕が気持ちいい。差し出された水をありがたくいただいて、俺はふと時計を見て驚愕した。

薄暗い部屋の中、短い針はどう見ても十一を指している。

「お前、ゲホッ、学校は?」

まさか俺の看病のために休んだんじゃないだろうな、と問うと、雛菊は微笑んだのち、ころころと笑った。

「んなわけないでしょう。ちょうどサボりたい気分だったの。むしろ蒼が風邪ひいてくれて助かったわ」

うそだ。絶対に嘘だ。

本当にそうなら自室でゲームでも弓道の動画でも見ていればいいじゃないか。
部屋やベッドの周りには、雛菊がずっと俺の看病をしていた痕が見て取れる。
こんなに甲斐甲斐しく看病して貰って、雛菊の言葉をそのまま受け取れるほど図太くない。

「ごめん…。ありがとう」

雛菊は呆れたようにため息をついて、俺の髪を雑に撫でた。


いかにも雛菊らしいと思った。自分では人との繋がりや友情についての情が薄いと思っているが、その実誰よりも周りを見ていて、大事にしている。
人に本性を見せられないのは、信頼の有無の関係ではなく雛菊の臆病さゆえだ。

それに本気で気づいていないというのだから、可愛い人だ。

俺が音の出ない喉で笑うと、雛菊は怪訝にこちらを見下ろした。
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