これは果たして恋なのか。
◾️◾️◾️

蒼が体調を崩した。昨日の夕方ごろから少しおかしいかと思っていたのだが、やはりというべきか次の日には熱が出た。
蒼は学校の行事の後に体調を崩しやすいのだ。

「蒼。お粥持ってきたけどーーって」

ドアを開け、小声で呼びかけても、聞こえるのは寝息ばかり。

今朝、いつもはとっくに起きている時間にも関わらずリビングに蒼の姿が見えなかったので部屋に行ってみると、なんとスマホに手を伸ばしたままぶっ倒れていた。

さっき起きた時も会話ができていたし、落ち着いて眠る姿をみるに、ずいぶんマシになったようだ。
ほっと安心して、ベッドの脇に腰を下ろす。
ぐっすりと眠る姿は随分あどけなく見える。

いつもはあんなに生意気なのにね、とこっそり心の中で笑う。
いくら血は繋がっていなくても、弟は弟。可愛くないと言えば嘘になる。本人には絶対に言わないけれど。

閉められたカーテンの隙間から微かに陽が漏れる。
昨日の蒼の言葉を胸で反芻する。

“ たしかにホントの家族じゃない。でも大切に思ってるよ”

その場では、確かにそうだと思った。
蒼は生意気だけど私が本当に嫌がることはしないし、不器用ながらの優しさがある。お父さんとお母さんは言わずもがな私を大切にしてくれている。

私はどうだろうか。今はマシになった。ちゃんと“個々”をみることができている。でもーーその前は?

ーー果たして、“家族”に固執していた私は、皆がくれる愛に相応するものを返せていただろうか。

私はとんでもない間違いを冒したのではないだろうか。
たまらず、私は薄闇の中、震えた両手で、眠る弟の手を握りしめた。
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