極甘社長にほだされても二度と秘書はやりたくない
番外編 ~藤沢社長の自覚~
※本編4と5の間ぐらいの藤沢視点のお話です。
「お前、最近やけに身なりがちゃんとしてるんじゃないか?」
行きつけのカジュアルイタリアンの店で竹野と二宮と食事をしていると、
じっとその鋭い目つきで俺を頭から舐めるように見てきた。
「そうか? というか、そんなにだらしなかったかな……」
「あぁ、いや、そういう意味じゃない。それはそれで社長として問題だからな」
「問題あったら私の方が先に指摘してるわよ」
目の前で仲睦まじそうに笑う二人を見て、俺自身もふっと力抜けたような気分になる。
大学時代からの付き合いで、そこから一緒に起業をして。
二人から付き合い始めたと聞いた時はやっとか、という気持ちとどこか置いて行かれたような気分にもなった。
けれど、今目の前にいる二人をみていると、そんな気持ちはみじんも浮かんでこない。
「ま、あの子のおかげでしょ。入社初日で人間違いで出張つれていっちゃった子」
「……拉致か?」
「人聞き悪いなぁ。あのときはトラブルで焦ってたから……」
今日は二人の結婚式のスピーチの件で打ち合わせをする予定だったのに、
すっかりそのことは横に置かれてしまっている。
確かに、彼女と一緒に住むようになってから、少し張っていた気持ちが緩んでいる実感はあった。
抜け落ちていたピースがハマったような、そんな感じだ。
「で、その子住む家もないからって、そのまま囲っちゃって」
「…………会社の顧問弁護士に相談か?」
「だから、それもいろんな不幸が重なってたんだよ。放っておけないだろう?」
住む場所だったはずの鍵を受け取る機会を勘違いで奪ってしまったのは俺の責任だ。
それに、使ってない部屋だってあったし……。
「でも、誰かがいる空間っていうのもいいな、とは思ってるかな」
「へぇ?」
俺の目の前で二人がワイングラスを傾けながらニヤニヤとこちらを見ている。
まずい、いらない話題を提供してしまったかもしれない。
話題をそらすようにメニューを広げると、デザートの欄にティラミスの文言を見つけてしまった。
「ここのティラミス美味しいよね。持ち帰りとかできないかな……」
どうせなら彼女と美味しいものを食べたいなと、ふと頭に浮かんできてしまった。
俺の作った料理を美味しいといいながら食べてくれるところも、
掃除や洗濯ぐらいはやらせてくれと言われ、彼女がいることで生活に華が出てきたように感じている。
「なるほど、その子に惚れ込んでるってことか」
その言葉に思わず手が止まる。
「休暇中なのにやたら仕事のことで連絡してくると思ってたけど、彼女が困らないようにしたかったってこと?」
「へぇ~、なるほどな、ふ~ん。今度顔見に行ってみるか、あ、その子じゃなくてデレてるお前の顔な」
「いや、え、と……」
二人に指摘されて身体の熱が上がっていく気がした。これは酒のせいなんかじゃない。
そうか、俺って、彼女のこと……。
「好きってことか……」
思わず口元を押さえてしまう。彼女の力になれたら良いと思っていた。
それは自分の、社長としての責任も感じていたからだ。
「はぁ……お前今さら学生みたいなこと言ってんのかよ」
竹野は呆れた様子で目を細めたため息をついた。
最後に彼女がいたのはいつのころだったか、社長になってからは会社のことばかりを考えていて、恋愛なんて久しくしていなかった。
だから、指摘されて気づいてしまったこれは、恋心。
「我々の上司にも春が再来ってことですかねぇ?」
わざとからかうような口調で二宮が笑う。
春……確かに彼女といると心の中がどこか暖かくなってくる。
彼女が笑うと俺も嬉しくなる。きっと、そういうことなんだろう。
「そう言われると、なんだか腑に落ちた気がする」
「ふふ、私たちの幸せのお裾分けはちゃんとしてあげるから、彼女も結婚式に連れてきてよね」
「それまでに振られないといいな」
二人の結婚式に俺と彼女が参列する姿を思い浮かべてみる。
幸せそうな二人を目の前に俺の隣で笑う彼女が鮮明にイメージできる。
「大丈夫。そんなことにはならないよ」
欲しいものは自分で体に入れる。今までだってそうやって生きてきた。
だから、きっと、大丈夫だ。
「お前、最近やけに身なりがちゃんとしてるんじゃないか?」
行きつけのカジュアルイタリアンの店で竹野と二宮と食事をしていると、
じっとその鋭い目つきで俺を頭から舐めるように見てきた。
「そうか? というか、そんなにだらしなかったかな……」
「あぁ、いや、そういう意味じゃない。それはそれで社長として問題だからな」
「問題あったら私の方が先に指摘してるわよ」
目の前で仲睦まじそうに笑う二人を見て、俺自身もふっと力抜けたような気分になる。
大学時代からの付き合いで、そこから一緒に起業をして。
二人から付き合い始めたと聞いた時はやっとか、という気持ちとどこか置いて行かれたような気分にもなった。
けれど、今目の前にいる二人をみていると、そんな気持ちはみじんも浮かんでこない。
「ま、あの子のおかげでしょ。入社初日で人間違いで出張つれていっちゃった子」
「……拉致か?」
「人聞き悪いなぁ。あのときはトラブルで焦ってたから……」
今日は二人の結婚式のスピーチの件で打ち合わせをする予定だったのに、
すっかりそのことは横に置かれてしまっている。
確かに、彼女と一緒に住むようになってから、少し張っていた気持ちが緩んでいる実感はあった。
抜け落ちていたピースがハマったような、そんな感じだ。
「で、その子住む家もないからって、そのまま囲っちゃって」
「…………会社の顧問弁護士に相談か?」
「だから、それもいろんな不幸が重なってたんだよ。放っておけないだろう?」
住む場所だったはずの鍵を受け取る機会を勘違いで奪ってしまったのは俺の責任だ。
それに、使ってない部屋だってあったし……。
「でも、誰かがいる空間っていうのもいいな、とは思ってるかな」
「へぇ?」
俺の目の前で二人がワイングラスを傾けながらニヤニヤとこちらを見ている。
まずい、いらない話題を提供してしまったかもしれない。
話題をそらすようにメニューを広げると、デザートの欄にティラミスの文言を見つけてしまった。
「ここのティラミス美味しいよね。持ち帰りとかできないかな……」
どうせなら彼女と美味しいものを食べたいなと、ふと頭に浮かんできてしまった。
俺の作った料理を美味しいといいながら食べてくれるところも、
掃除や洗濯ぐらいはやらせてくれと言われ、彼女がいることで生活に華が出てきたように感じている。
「なるほど、その子に惚れ込んでるってことか」
その言葉に思わず手が止まる。
「休暇中なのにやたら仕事のことで連絡してくると思ってたけど、彼女が困らないようにしたかったってこと?」
「へぇ~、なるほどな、ふ~ん。今度顔見に行ってみるか、あ、その子じゃなくてデレてるお前の顔な」
「いや、え、と……」
二人に指摘されて身体の熱が上がっていく気がした。これは酒のせいなんかじゃない。
そうか、俺って、彼女のこと……。
「好きってことか……」
思わず口元を押さえてしまう。彼女の力になれたら良いと思っていた。
それは自分の、社長としての責任も感じていたからだ。
「はぁ……お前今さら学生みたいなこと言ってんのかよ」
竹野は呆れた様子で目を細めたため息をついた。
最後に彼女がいたのはいつのころだったか、社長になってからは会社のことばかりを考えていて、恋愛なんて久しくしていなかった。
だから、指摘されて気づいてしまったこれは、恋心。
「我々の上司にも春が再来ってことですかねぇ?」
わざとからかうような口調で二宮が笑う。
春……確かに彼女といると心の中がどこか暖かくなってくる。
彼女が笑うと俺も嬉しくなる。きっと、そういうことなんだろう。
「そう言われると、なんだか腑に落ちた気がする」
「ふふ、私たちの幸せのお裾分けはちゃんとしてあげるから、彼女も結婚式に連れてきてよね」
「それまでに振られないといいな」
二人の結婚式に俺と彼女が参列する姿を思い浮かべてみる。
幸せそうな二人を目の前に俺の隣で笑う彼女が鮮明にイメージできる。
「大丈夫。そんなことにはならないよ」
欲しいものは自分で体に入れる。今までだってそうやって生きてきた。
だから、きっと、大丈夫だ。