愛なんて要らないから
ふと悠の枕元を見ると、ピンク色の表紙のアルバムみたいなものが目に入ってきた。
なんとなく中身が気になってアルバムに手を伸ばそうとした時。
「萌ちゃんっ!!」
病室の外から妹さんの大きな声が聞こえたかと思うと、ガラガラっと勢いよく病室の扉が開いた。
「美羽ちゃん?悠に会いに来ないでって言ったよね?」
中に入ってきたのは萌ちゃんで、彼女は私を見るなり、にこにこと不自然な笑みを浮かべながらこちらに近付いてきた。
「萌、ちゃん……全部嘘だったんだよね?」
「何が嘘なの?」
「悠から指輪をもらったとか、婚約者とか」
「ああ、これのこと?嘘じゃないよ?ちゃんと悠から指輪を貰ってるもん」
萌ちゃんは左手を見せてきた。
そこには、SNSに載っていたものと同じ指輪がはめられている。
「指輪にはちゃんとイニシャルも入ってるの」
左手の薬指から外して手渡された指輪の裏側には、確かにHとMの文字が彫られていた。
「萌ちゃん、そこに彫られているMは萌ちゃんのことじゃなくて美羽さんのことでしょ?これ以上、お兄ちゃんと美羽さんを苦しめるのはやめて」
後から入ってきた妹さんの悲痛な思い。
「私を苦しめてたのは美羽ちゃんの方。悠と結婚するのは私だった……!私達の間には赤ちゃんだっていたのに……!」
「それは……」
萌ちゃんから出てきた言葉に、何も言えなくなってしまった妹さんの様子を見て、今の話は本当の話であることを察した。