愛なんて要らないから
5
誰かがずっと私の手を握っていてくれた気がする。
その温かい手が、一体誰のものなのか知りたくなって、ゆっくりと目を開けた。
「……美羽?」
名前を呼んで、私の顔を覗き込んでいるのはお母さん。
視線を合わせると、お母さんは一瞬だけ泣きそうになり、そのあと慌ててナースコールを押してから私の身体を優しく包み込んでくれた。
「自分でお腹を刺すなんて、何やってるのよ。刺したのが病院じゃなかったら助かっていなかったのよ?」
そっか、私は助かってしまったのか。
悠と一緒にいられる道はこれしかないと思ったあの時、私は命を失う覚悟で刺した。
でも、それは叶わなかったんだ……。
「ごめ……なさい……」
まだはっきりと話すことのできる状態ではないけれど、それでも目の前にいる今にも泣きそうなお母さんには謝らなければいけないと口を動かした。
「あなたの彼もさっきまで傍についててくれたんだけどね、仕事の電話があるからって今はここを離れているの。目を覚ましたら連絡くださいって言われているから、連絡を入れるね」
私の、彼……?なんのことだろう。
悠が目を覚ましたなんてことがあるわけないし、もし目を覚ましたとしても仕事の電話をしている場合でもない。
お母さんは一体……誰のことを言っているの?