愛なんて要らないから
しばらく私の啜り泣く音だけが響く静かな病室に、コンコンっとノックの音が聞こえた。
皓太さんは私の額に手の平を乗せ、そのまま優しく瞼を撫でると小さな声で目を閉じるように言ってきた。
言われた通りに目を閉じると同時に病室に入ってきたのは、お母さんだった。
「美羽〜?寝てるの?皓太さん、ずっと美羽についていてくれて本当にありがとう」
「いえ。美羽さん、ついさっきまた眠ってしまいました。俺ももう少ししたら一度帰ります」
「そっか。美羽が寝てるなら私もこのまま今日は帰ることにする。皓太さんも帰ったらゆっくり休んでね」
二人のそんな会話が聞こえてくる。
随分と仲のいい様子の二人に少し驚きつつ、そのままお目を閉じて寝たふりを続けていると、母さんはまた病室を出ていった。
皓太さん、私が泣いていたことをお母さんにバレないようにしてくれたんだ。
この人の咄嗟の優しさにはいつも助けられてしまう。
そんな自分を不甲斐なく思う気持ちと、お母さんが病室に来たことで、気持ちが切り替わって涙が止まった。
ゆっくり目を開けると、皓太さんが優しく私のことを見つめていて、なんだかそれが少し照れ臭く感じて慌てて視線を逸らす。
「あの……ありがとうございます。なんだか、巻き込んでしまってすみません」
「俺が勝手に入り込んだんだから気にしないで。しばらく仕事も休みもらったから、今は美羽ちゃんのそばにいさせて欲しい」
「……いえ、これ以上、迷惑をかけるのは嫌です」
私なんかのために仕事を休むなんて、そんなの絶対にダメに決まっている。
もうたくさん助けてもらったのだから、これ以上は皓太さんに迷惑をかけたくない。