愛なんて要らないから
大和は車椅子を止めると、私の向かいに立ち、勢いよく頭を下げてきた。
「あの時は本当にごめん。萌が捕まったって聞いて、悠の妹に何があったのか全部聞いた。まさか萌があんなことするなんて……」
大和の声は震えていて、あの時のような勢いは全くなく、顔をよく見ると憔悴した顔をしていた。
悠の死が悲しいのは、私だけじゃない。
大和にとって悠は古くからの親友。私なんかよりもずっと長い年月を過ごしてきたのだから、憔悴するのも無理はない。
「萌が悠と復縁したいって泣きながら相談してきたところから始まってさ。悠からも萌との交際について悩んでいたなんて相談されたことがなかったから、だから、萌を応援してやらなきゃって気持ちになっちゃって」
物凄く必死に喋る大和の姿を見て、彼もまだ、この状況の全てを受け入れられていないのだと感じた。
「萌から美羽の悪い噂をよく聞いてて。いくら悠に美羽はやめておけって言っても、あいつは美羽のこと悪く言うなら俺と縁を切るとまで言ってたんだ。それなのに俺、萌に協力するようなことばかりして。俺のせいで、悠は……」
どうやら大和は悠の予定を聞き出し、萌ちゃんに逐一伝えていたらしく、事故の日、悠が私の元にプロポーズしに行くという情報も大和が教えたらしい。
それを聞いて、プロポーズを止めに行くと言った萌ちゃんが、どんな行動をするかまでは大和にだって予想ができなかったと思う。
でも、大和が萌ちゃんに伝えなければ、事故は起きなかったかもしれないし、悠の命が消えることもなかったのかもしれない。
だけどそんなの。起きなかったかもしれないなんて、そんなの何の意味もない。
だって、もう遅いから。全部遅いんだから。