愛なんて要らないから
ー もう、愛なんて要らない。
そう思った、人生のどん底にいた日。
目の前にあったという理由だけでふらりと入ったバー。
そこでたまたま飲んでいた、はじめましての相手と一夜限りのつもりで夜を共にした。
どんな形であれ、私の初めてを捧げた人。
私が泣きたい時に泣かせてくれた人。
どれも一夜限りでは済まされないほど、皓太さんという存在は私の中では大きかった。
私の最愛の人は、どんなに想っても、会いたいと願っても、もう手の届かない場所にいってしまって。
本当なら今すぐにでも会いに行きたいけど、それを彼が望んでいないのなら……。
私にできることは、上を向いて、あなたが大好きだと言ってくれた笑顔をたくさん見せることなんじゃないかなって思うんだ。
今はまだ、悠に会えないことが辛くて寂しいから上手く笑えないかもしれないけど、いつか必ず、悠が愛してくれた私でいられるようになりたいから。
精一杯、生きてみせるから。
だから、いつかあなたに会えるその時がきたら、たくさん抱きしめてほしい……。
愛なんて要らない。
愛なんて、必要のないものだと思っていた。
でもそれは、愛されていた日々があったからこその感情なんだって、気がついた時にはもう遅くて……。
愛を受け取ることが怖い私だけど、たくさん愛してもらった私だから、もう一度、愛と向き合ってみようって思う。
愛なんて要らないから一緒にいようと言ってくれた、皓太さんの優しさに甘えるだけじゃなくて、私なりの愛を彼に返していけたらいいって思う。
もう、愛なんて要らない、なんて言わない。
これからは愛を遠ざけるんじゃなくて、今まで自分が愛してもらったように、今度は私が愛を与えられる人になりたいから……。
愛なんて、要らないから fin.