愛なんて要らないから
「少し焦らせちゃったね。無理して言わなくても俺は離れていかないから。美羽ちゃんが本当に俺のことが嫌なら諦めるけど、そうじゃないなら、とりあえず一緒にいてみようよ」
俯いていた顔をあげて皓太さんの顔を見れば、いつものように優しく私のことを見つめている。
出会った時から、ずっとこうして寄り添ってくれる彼の優しさに、そしてそれにすぐ甘えてしまう自分の弱さに、また涙が溢れ落ちそうになってしまう。
「まあ……美羽ちゃんに好きになってもらえるよう、努力はさせてもらうけど」
少し照れながらそう言った皓太さんの手を、上手く言葉にできない返事の代わりにゆっくりと握った。
今は、これが私の精一杯。
私は悠のことを愛しているし、この先もずっと愛していたい。そう思う気持ちは絶対に嘘なんかじゃなくて。
だから、皓太さんを手放したくないという気持ちは私にとって本当は認めたくない感情だった。
認めたくないけど、皓太さんが離れていってしまうのも嫌で。
それを口に出して言葉にしてしまったら、本当の意味で悠との別れになってしまう気がして、怖くてたまらなかった。
そんな私の気持ちまで汲み取ってくれる皓太さんの優しさに、今は少しだけ甘えさせて欲しい。
皓太さんの温かい手を握っていると、彼も同じくらいの強さで握り返してくれた。
愛なんて要らないと思った私と、愛なんて要らないと言った皓太さん。
こんな私たちの関係がこの先どうなっていくのか今はまだ分からないけれど、とりあえず、まず一歩を踏み出してみたい。
だって、こうして手を握り返してくれることが、当たり前じゃないってことを痛いくらいに知ってしまったから……。