私を言葉で抱く年下作家の溺愛
ふと、彼と目が合う。ほんの一瞬。

それだけで、伝わるものがある。

——書き切った。そう言っているみたいに。

でも私は、すぐに視線を外した。何事もなかったように。

そのまま、打ち合わせスペースへ向かう。

「雨宮先生」

あくまで、距離を保った呼び方。

「やっと今年も新作、出せたわね」

軽く言う。すると彼は、少しだけ口元を緩めた。

「編集長のおかげですよ」

——その言葉。ほんの少しだけ、胸に残る。

でも、表情には出さない。

「当然よ」

軽く受け流す。

「売れる原稿を書かせるのが、私の仕事だもの」

あくまで、冷静に。編集長として。

その後——編集部の空気は、一気に変わった。

「雨宮蓮の最新作、読んだ?」
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