私を言葉で抱く年下作家の溺愛
「校正で読んだことあるけど……」

ざわめきが広がる。

「……あれ、実話っぽいよね」

その一言に。ほんの一瞬、指が止まる。

……気づく人は、気づく。

あの温度。あの言葉。全部、作り物じゃない。

「すごいよな」

別の声が続く。

「あの雨宮蓮に、ここまで書かせたのか」

その評価は、彼だけじゃない。——私にも向いている。

「神谷らしいな」

社長が、軽く言う。

「さすがは編集長になるだけの力がありますよ」

「どれだけ尻叩いたんだか」

経営陣の冗談めかした声。

でも、その裏にあるのは、確かな評価。

私は何も言わず、書類に目を落とした。

ペンを走らせる。いつも通りの、仕事の手つき。

……違う。尻を叩いたんじゃない。引き出した。
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