スターライトパレード
音楽堂でピアノを弾いてから、一週間。
今日は先週のテスト返却日。
苦手だった化学も数学も、思っていたよりずっとできていた。
そのうれしさを抱えたまま、放課後の足は、気づけばまたここへ向いていた。

誰もいないのを確認して、そっとピアノに手を伸ばす。
鍵盤のふたを開けるだけで、少しだけ気持ちがほどける。
何を弾こうかな。
そう考えていた、そのときだった。

「なぁ!あんた!!!」

突然、背後から大きな声をかけられた。

驚いて顔を上げると、そこには黒いパーカーにサングラスの男の人が立っていた。
フードの隙間から見える髪は、金髪っぽい。
背も高いし、声もでかいし、なにより勢いがすごい。
え……私に言ってるの?

戸惑って動けずにいると、彼はずかずかと私の隣まで歩いてきて、ピアノに手を置いて言った。

「なぁ、あんた。オレらに曲、書いてくんね?」

……え?
あまりにも突然すぎて、頭がついていかない。
曲を、書く?
私が?

「人違いじゃないですか?」
「人違いじゃないって!あんたがいいんだって!」

やっとそれだけ口にすると、彼は即座に首を振った。
……やばい。
完全に変な人だ……!

「ご、ごめんなさいっ……知らない人と話すなって言われてるんで……!」

ほとんど反射みたいにそう言って、慌ててカバンをつかむ。
そのまま背を向けた。

「おい!待っ……!」

まだ何か言っていたけど、聞かないふりをして公園を走り抜ける。
心臓がばくばくして、足まで妙に速くなる。
怖かった、はずなのに、どこかでさっきの言葉が引っかかっていた。

『オレらに曲、書いてくんね?』

知らない人の言葉なんて気にしなくていい。
そう思うのに、耳の奥に残って離れなかった。
< 2 / 28 >

この作品をシェア

pagetop