イケメン狸さんたち、カボチャを届けにくるよ(毎週金曜日連載中)
第二話 たぬきからの尋問
つぶらな瞳がわたしを見上げた。その瞳の持ち主の唇は少しずつゆっくり離れて、その隙間から白い歯がチラッと見えた。

「まん丸と引っかかった!!ワイワイ!!」

いたずら?!見た目の割に凶暴な男の子だな。

「はいはい、引っかかった。それでは、わたしをおろしてください。」

「そんな簡単にはいけないさ。まずは質問がいくつかある。答え次第で縄をとく…かも。」

牙くんの鋭い目が少し上がった。

「まず、どこからきたかお前?名前は?」

牙くんが求めている答えはなんだろう…正しい答えはわからないけど、何か答えなきゃ!

「ほ、北海道!な、な、名前は狢沢千結!」

わたしの唇はぷるぷる震えたせいで、言葉ごとにじゃまになりなかなか声が出なかった。心臓の鼓動は全身まで伝わり、小指の骨までドックン!ドックン!と小刻みに震えた。

牙くんは唇を噛んだ。あまりにも強く噛んで、歯の隙間から赤い液体が一粒二粒と唇の表面を脂のように潤わせた。

「どうしてここに?」

わたしはごっくんとつばをのんだ。丸吉はカリカリとのんきにポテチを食べながらわたしのスマホを夢中にいじっていた。

「お母さんが病気でもう半年で死ぬんだって。それでおばあちゃん家に預けられた。」

お母さんの香水の匂いを思い出し、わたしの目はうるうるし始めた。

牙くんの目が緩んだ。鋭かった目つきが悲しそうなのと変わった。顎からも力が抜け、無言でわたしが捕まえている網の縄をほどかしてくれた。

「俺の母も、俺が子たぬきの寺子屋に入ったばかりのころ、亡くなった。」

牙くんはポツリと小さくつぶやいた。

「脅かしてすまんな。千結はすげぇな。しっぽと耳まで無へと変えられて。深川さえびっくりするだろうな。」

耳を無に変える?!

わたしがキョトンとしていたら、牙くんがニヤッと笑って目が再び鋭くなった。

「千結はここ引っ越したばかりだったな。この俺様の縄張りを紹介しててあげようっか。」

ポテチが先ほどなくなり、ぼんやりとスマホを眺めていた丸吉もこっちを振り向いて、

「僕もいく!これ返す!もう数字を叩くのつまらなくなったんで!」

空っぽのポテチ袋とスマホ。良かった〜!そりゃ、パスワードかかっているからね。わたしはクスクス笑い始めた。

丸吉くんは不思議そうにわたしの顔を見つめた。

本当はこれはものすごい機械だと教えたかった気持ちもあったけど、やはりそんなこと教えたらまた盗まれるだろうなと思い、黙ることにした。

それからおばあちゃんとおじいちゃんたちに事情を説明してから牙くんと丸吉くんと一緒に町の方へ出かけました。

おばあちゃん家は森に囲まれている小さな丘の上にあり、そこから一本の土道はにょろにょろ〜とヘビのようにクネクネしながら町の方へと続いていた。

街に入ったらまるで江戸時代へタイムスリップでもしたかのようだった。しかし、この江戸はたぬきだらけ!

大通りの両側には木製の家やお店がずらりと並んでおり、飴を売っている屋台の前には小さな子どもたちやたぬきがワイワイと話していた。

た…たぬきが話した?!

「あそこは子たぬきの寺子屋。5つになるとそこに通い始め、」

牙くんは子たぬきの寺子屋と反対側を指した。

「12つになるとあそこの大たぬきの寺子屋に通うようになる。二十歳になると卒業だ。」

2つの建物は広い庭を挟んでいた。その庭の真中で袴を着た二人の小さな女の子たちがなかよく泥団子を作って遊んでいた。おそらく、あの子たちは子たぬきの寺子屋の生徒だろうね。懐かしいな、泥団子。わたしも幼稚園のころよく作って幼稚園の先生が庭で飾ってくれた。

「僕もいれてよ!!」

「いいよ〜!!」

丸吉が女の子たちのわに入り

ぽかっ!!

け、けむり?!?!火事?!?!煙が消えた。女の子たちも丸吉もいない?!

そこに立っていたのは3匹のたぬき。そのたぬきちが鬼ごっこでも遊ぶように庭のあっちこっちを駆け回った。

「あれみた?!」

「ええ、人間に化けるのはまだ難しいから泥団子作りたい時だけは数分化けたな。子たぬきの寺子屋で初めて習う術なのにまだできないなんて情けない。」

ば、化ける?!?

「この学校で化け術習うの?!」

「あたりめぇ。北海道の寺子屋は違ったのか?化けないと生きていく上で不便だし、ほぼ生きていけられないからな。人間の姿に化けないと手で細かな作業できないし。」

し、信じられない!昔話みたいだ!たぬきが化けるなんて!でも…今は確かに目の前で見た。

わたしは唖然とした。つまり…この町はたぬきコスプレが流行っている変な町じゃなくて、たぬきばっかが住んでいる変な町だ。

牙くんは意地悪そうにニヤッと笑った。

「千結ちゃんは化け術がうまくて本当に良かったな〜。大たぬきの寺子屋に入るとな、毎週の化け術のテストでうまく化けないと厳しい罰を受けることになるぞ。大変痛そうからちゃんと勉強しとけよな。」

「俺のペットが早々逃げちゃったら困っちゃうな」

牙くんがそう言って、ぬらりと唇を舐めた。

き、きびしい罰?!わたしはたぬきでもないし絶対に化けないのに?!?この寺子屋でうまくやっていけるはずがない!
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