イケメン狸さんたち、カボチャを届けにくるよ
第八話 努力は無駄だ
「それでは、今週の化け術テストを始めたいと思います」
(うわっ……オワッタ)
毎日毎日休みもなく深川くんたちと化ける練習続けてきたけど、まだちっとも化けない。
「ご存知の通り、来月の初めはいよいよ年に一度の満月の月見祭り。伝説のカボチャを届ける任務を任されるよう、頑張っていきましょう。それでは、丸吉くんからでお願いします!」
ぽわっ
わたしの番になったらどうする……わたしってもしかしたら農業させられるはめに?! 一人で?!
「素晴らしい深川くん! それでは小川ちゃん!」
ぽわっ
ぽわっ
ぽわっ
(みんな上手……どうしよう)
わたしの手はどんどん汗でびしょびしょに。胸が苦しいほどドキドキする。緊張で歯ぎしりしてしまう。
「それでは、狢沢ちゃん!!」
わたしが立つと視界が歪んだ。
「で、できません!!!!」
走った。風よりも早く。
寺子屋の外へ走った。走って走ってもっと走った。
遠くから追いかける人の声。
(隠れなきゃ!)
必死に見渡した。木を見つけた。全力逃走。
転んだ!!
「いってってって」
(もう、無理だ。動けない)
わたしはその場で伏せて目を閉じた。
「狢沢ちゃん、大丈夫? 突然逃げ出しちゃダメだろう!! 不合格。ほら、事務室へ行くよ」
そう言って、ポン助先生はわたしの腕を掴んで、強引的にわたしを寺子屋の事務室へと引っ張った。
無表情なままポン助先生からの説教を聞いた。もう、どうでもいい。何もかも。
無表情なままおばあちゃんに電話をかけ、これから1週間家に帰らないことを伝えた。
そして、無表情なまま農業服へと着替え、田んぼへと出かけた。
心は冷たい真っ黒な霧に包まれている。霧のせいか、周りの人も景色も遠くて遠くてわたしまで届かない。
「満月の月見祭りで選ばれなきゃ、お母さんは死ぬ。なのに、なのにーー」
わたしは膝から崩れ落ち、田んぼの泥の中でうずくまった。
「千結〜!! 千結〜!!」
牙くんの声だ。それでももう動けない。無理だ。もう知らない。
「千結? そこでなにしているの、ほら、練習しなきゃダメだろっ!」
牙くんはわたしを抱き上げた。そして、田んぼの近くの地面に座り、わたしを膝の上にのせた。
「もう無理だ! わたしはどうしても化けられない!! これじゃ、お母さんは……」
牙くんの目つきは一瞬で柔らかくなった。
「伝説のカボチャ母に届きたいもんな……」
顔を牙くんの胸に埋めた。暖かい。牙くんの袴の生地のサラサラがわたしの顔を撫でくれた。
「化けられなくたっていいんじゃねぇっか?」
わたしはギョッとした。
「なにがいいんだよ!!!」
先生に向けられていた怒りが一気に吹き出し、わたしの心はどんどん熱く燃え始めた。霧は水となり、ポタッポタッと堕ちてゆく。
「ちげぇよ、そうゆう意味じゃねぇ。ほらーー」
牙くんはキョロキョロと周りに誰かいないか見渡した。そして、私の顔に近づいて、そーっとわたしの耳の中へとつぶやいた。
「伝説のカボチャ欲しいなら盗めばいいんじゃねぇっか? いつも無防御で畑に眠ってるしな」
「ぬ、盗む!?!」
なんとなく、ものを盗んではいけないという倫理観がある。しかし! 倫理観とお母さんの命どっちが大事!? それはお母さんの命に決まってんだろう!!
「よし! やりましょう!!」
わたしはもう力に溢れかえっている。
「このまま畑に行き、盗めばいいんだろう?」
私がパッと立ち上がって行こうとしたら、牙くんに肩を捕まえられた。
「え、どうするんの?!」
牙くんはしばらく考え込んだ。
「確かに、伝説のカボチャは誰にも守られてねぇ。しかし、2匹のあやしき狸物がかぼちゃを運んでいるのを見かけたら、通報されるんだろうな。まずは、地図を作らねぇとな。誰の目にもつかない道を選ばなきゃ。あと、盗んだのはいいとして、その日のうちに出荷しねぇや意味ねぇからな。次に消えたことはどこかのやつに発見されるからな」
わたしはハッとした!
「確かに!! ……てゆうことは……伝説のカボチャを盗んだらそのままこの島から逃げなければならないってこと?」
「そう! そうだろう〜そうだろう〜いつも勉強ばかりさせられる深川くんより理解が良くてノリが良いんだろ〜俺はーー」
「でも、本当にいいの、牙くん? そんなことしたら村長になれなくなるよ?」
「大丈夫」
牙くんはわたしへ顔を近づいた。
「千結がいてくれば、俺はそれだけでいい」
(うわっ……オワッタ)
毎日毎日休みもなく深川くんたちと化ける練習続けてきたけど、まだちっとも化けない。
「ご存知の通り、来月の初めはいよいよ年に一度の満月の月見祭り。伝説のカボチャを届ける任務を任されるよう、頑張っていきましょう。それでは、丸吉くんからでお願いします!」
ぽわっ
わたしの番になったらどうする……わたしってもしかしたら農業させられるはめに?! 一人で?!
「素晴らしい深川くん! それでは小川ちゃん!」
ぽわっ
ぽわっ
ぽわっ
(みんな上手……どうしよう)
わたしの手はどんどん汗でびしょびしょに。胸が苦しいほどドキドキする。緊張で歯ぎしりしてしまう。
「それでは、狢沢ちゃん!!」
わたしが立つと視界が歪んだ。
「で、できません!!!!」
走った。風よりも早く。
寺子屋の外へ走った。走って走ってもっと走った。
遠くから追いかける人の声。
(隠れなきゃ!)
必死に見渡した。木を見つけた。全力逃走。
転んだ!!
「いってってって」
(もう、無理だ。動けない)
わたしはその場で伏せて目を閉じた。
「狢沢ちゃん、大丈夫? 突然逃げ出しちゃダメだろう!! 不合格。ほら、事務室へ行くよ」
そう言って、ポン助先生はわたしの腕を掴んで、強引的にわたしを寺子屋の事務室へと引っ張った。
無表情なままポン助先生からの説教を聞いた。もう、どうでもいい。何もかも。
無表情なままおばあちゃんに電話をかけ、これから1週間家に帰らないことを伝えた。
そして、無表情なまま農業服へと着替え、田んぼへと出かけた。
心は冷たい真っ黒な霧に包まれている。霧のせいか、周りの人も景色も遠くて遠くてわたしまで届かない。
「満月の月見祭りで選ばれなきゃ、お母さんは死ぬ。なのに、なのにーー」
わたしは膝から崩れ落ち、田んぼの泥の中でうずくまった。
「千結〜!! 千結〜!!」
牙くんの声だ。それでももう動けない。無理だ。もう知らない。
「千結? そこでなにしているの、ほら、練習しなきゃダメだろっ!」
牙くんはわたしを抱き上げた。そして、田んぼの近くの地面に座り、わたしを膝の上にのせた。
「もう無理だ! わたしはどうしても化けられない!! これじゃ、お母さんは……」
牙くんの目つきは一瞬で柔らかくなった。
「伝説のカボチャ母に届きたいもんな……」
顔を牙くんの胸に埋めた。暖かい。牙くんの袴の生地のサラサラがわたしの顔を撫でくれた。
「化けられなくたっていいんじゃねぇっか?」
わたしはギョッとした。
「なにがいいんだよ!!!」
先生に向けられていた怒りが一気に吹き出し、わたしの心はどんどん熱く燃え始めた。霧は水となり、ポタッポタッと堕ちてゆく。
「ちげぇよ、そうゆう意味じゃねぇ。ほらーー」
牙くんはキョロキョロと周りに誰かいないか見渡した。そして、私の顔に近づいて、そーっとわたしの耳の中へとつぶやいた。
「伝説のカボチャ欲しいなら盗めばいいんじゃねぇっか? いつも無防御で畑に眠ってるしな」
「ぬ、盗む!?!」
なんとなく、ものを盗んではいけないという倫理観がある。しかし! 倫理観とお母さんの命どっちが大事!? それはお母さんの命に決まってんだろう!!
「よし! やりましょう!!」
わたしはもう力に溢れかえっている。
「このまま畑に行き、盗めばいいんだろう?」
私がパッと立ち上がって行こうとしたら、牙くんに肩を捕まえられた。
「え、どうするんの?!」
牙くんはしばらく考え込んだ。
「確かに、伝説のカボチャは誰にも守られてねぇ。しかし、2匹のあやしき狸物がかぼちゃを運んでいるのを見かけたら、通報されるんだろうな。まずは、地図を作らねぇとな。誰の目にもつかない道を選ばなきゃ。あと、盗んだのはいいとして、その日のうちに出荷しねぇや意味ねぇからな。次に消えたことはどこかのやつに発見されるからな」
わたしはハッとした!
「確かに!! ……てゆうことは……伝説のカボチャを盗んだらそのままこの島から逃げなければならないってこと?」
「そう! そうだろう〜そうだろう〜いつも勉強ばかりさせられる深川くんより理解が良くてノリが良いんだろ〜俺はーー」
「でも、本当にいいの、牙くん? そんなことしたら村長になれなくなるよ?」
「大丈夫」
牙くんはわたしへ顔を近づいた。
「千結がいてくれば、俺はそれだけでいい」