イケメン狸さんたち、カボチャを届けにくるよ
第九話 牙くんとの陰謀
 寝心地最悪!!農業罰を受けている生徒専用の小屋の一つで今夜眠った。一応、ベッドはちゃんとあるけど、シーツは明らかに泥で汚れており、小屋全体はめったに手入れされていないのはひと目見たらわかるほとだ。

 カチカチに凝った体をほぐしながら朝ごはんの支度に取り掛かった。ベッドの横に置いてある説明書を読んだ。かまど使わなきゃっか……

 かまどのために木の枝などを集め、マッチでかまどに火をつけ、そこで米を炊いた。もちろん、白米じゃない。玄米。

 おかずはたぬき汁とひよこ豆のみ。なんでひよこ豆?!枝豆とかじゃなくて、外国産の缶詰ひよこ豆?!この島は全体的に言うとメッチャクチャ和風なのに、この小屋はベッドが置いてあるというのも可笑しくないの?!?布団はベッドの上位交換?!?

「これ、栄養失調になったら先生責任取るの?!」

 そうブツブツつぶやきながら不満げに玄米を頬張ってみたら……

「うまい!!」

 かまどで炊いたからかな、不機嫌なわたしでも認めざるのわ得られない格別な味だった。

(それにしてもひどいだな。今、寺子屋でみんなは何習ってるんだろう)

 おじいちゃんが言ったとおり、狸にはやはり人権というものはない。日本国憲法で言ったら、子どもを学校に行かせないで農業させられるのはまさに違法だ。国民の三大義務の一つを思いっきり無視している。この島は日本じゃないの?

「おい!! そこの君!! 怠けるな!」

 警備のおじさんがぼんやり空を眺めているわたしを叱りつけた。さすがにちゃんとしているかどうか見張りされないことはない。

(残念だな。このおっさんいなかったら1日中ゴロゴロできたのに。やはり大人だいっきらい)

 わたしは脳内であかんべーした。

 その風に泥だらけになりながら1日を過ごし、やがて日暮れとともに小屋へ戻った。お風呂はない。一応、近くに川はあり、小屋の中に木桶は置いてある。軽く洗い流した。

コン
 コン
  コン

「千結?」

「牙くん!!!!」

 わたしは喜びのあまり小屋の障子が開けられた瞬間、牙くんの腕の中へ飛び込んだ。

 しかーし。

「牙くん?」

 深川くんは怪訝そうにわたしの顔を覗き込んだ。

「あ、ごめん。きっと牙くんがくるかなと思って……」

(気まずっ!)

 深川くんは何も言わずにギュッとわたしを包み込むように抱きしめた。

「ほら、焼き菓子」

 着物の懐の中からクッキーを2枚取り出した。

「わたしが和菓子嫌いと言ったの覚えてくれたね」

「うん」

 深川くんは地面とにらめっこしはじめた。

「ありがとう!」

 深川くんと仲良くかまどを囲んで、ムシャムシャもぐもぐとクッキーを食べた。小屋の床は冷たく、全身に鳥肌が小さくブツブツとたってた。空気も冷え込んでおり、吸い込むと鼻の奥がキンキンに冷えむずむずする。

 クッキーを口に放り込み、スッ〜っと口の中と崩れて泥化した。バニラの甘い香りが氷のようなわたしの鼻を取りぬけ、少し温めた気がした。

「勉強はじめよう」

(待って……深川くんと牙くん喧嘩していなかった?! もし、牙くんがいま来たらとんでもないことになる! わたしと牙くんの計画もバレちゃう!!)

 わたしはできるだけ自然なあくびを試みた。

「ふわぁ〜い、いや、今は眠くてなかなか勉強にならないと思うので明日とか、いや、その次の――あ、いつがいいかわからないけどとにかく今夜以外の日きてもらえたらなぁ〜と思いましてですね」

 わたしは必死に言い訳した。

「今やらないと。来週合格できない」

「あ、いや、その――」

コン
 コン 
  コン

「千結?」

 うわっ!! 心臓バクバク。

 玄関へ飛び込んだ。

「あ、その、今日はね、ちょっとその! あの、森の方へ行こうかな〜なんか新しい空気吸いたくて。いや、別に体調悪いわけでもないけど、いや、1日中働いて――」

 わたしは笑って誤魔化そうとした。

「牙くん」

「やあ、深川」

お互いは玄関でわたしを挟み、目が火花が飛んでた。

「ここで何してるんだろうな?」

「別に」

 深川くんも負けていない。

「生意気な態度だな!」

 牙くんは深川くんの胸ぐらを掴んだ。

「そちらこそ。ここで何を?」

「なんで教えなきゃいけないんだよ!!」

 わたしは小さく声が出た。これはヤバい。ガチで。わたしの目がうるうるしてきた。

「こ、こわいだょ」

 牙くんは肩から力を少し抜かした。

「ほら、千結、深川が襲ってきて怖かったよな。さあさあと出ていけ!」

 深川くんは不満そうに口を開いたけど、それからまた閉じて何回も頷いた。

「お前は千結ちゃんに何してるか、暴いてみせる」
 
「かならず」
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