光王子と月夜のシンデレラ
「……何でそう思う?」
「香水のにおいです。私たちに会う時はつけていなかったかもしれないけれど、私は鼻が利くので残り香でもわかります」

「今の田中先生だけじゃなくて、昨日私を眠らせたのも、肝試しの田中先生も、チャイナドレスの時のスーツのお兄さんも、ギャラリーの時話しかけてきたおじさんも……全部しいちゃんですよね」
「は?眠らせた?」

その事実を知らなかった今宮くんが、ものすごい剣幕でしいちゃんに聞いている。
その勢いに押され、しいちゃんがギブアップというように両手を上げた。

「この試験のためだったのよ……許してね」
「う、うん」
「いや、俺は許さないけど」

「未桜ち……佐倉さん、いつから気づいてた?」
「最初にあれって思ったのは肝試しの時。新菜ちゃんが違う人だって言った時に、意識して考えてみたら繋がったの。この前のセーラー服借りにお邪魔した時に、新菜ちゃんに足音も確認してもらって、確信になった」
「そう、あの時にはもう……」

そう言ってしいちゃんは顔に手を当て、田中先生の顔のマスクを取った。

「そっくりでしょ?アタシの特技、特殊マスク」
「すごいよ、すごいけど……しいちゃんの目的は何?しいちゃんは一体何者なの?」

万が一しいちゃんが敵だったら……
ずっと悪意を持って私たちを騙していたなら……と思って泣きそうになってしまう。

「それは……試験の②の答え合わせをしてからにしましょうか」
「②は……私はクリアできませんでした」
「バレてしまったのかね?」

ずっと黙っていた校長先生が口を開く。

「はい。でも自分で良かれと思ってしたことです!隣にいる今宮くんなら……特待生にふさわしいと思って……」
「何より……ずっと一緒にやってきた尊敬するパートナーです。個人戦で協力しないのは……私には無理でした、すみません」

なるほどね、と校長先生がつぶやいている。
しいちゃんは真っすぐ私たちを見つめている。

「……彼女は、誰なんですか?」
「……は?」
「俺はただ彼女の独り言が聞こえて、その答えをもらっただけ。それ以上でも以下でもない。」
「なっちゃ……今宮くん、それには無理があるんじゃ……」
「俺は愛する人である佐倉さんを見つけることができなかった、俺も②はクリアできませんでしたね」

愛する人……こんな時なのにその一言でドキッとしてしまう。
長い沈黙の後、校長先生が口を開いた。

「ふっ……いいんじゃないの。今後生きていく中で、大切な人を思いやる気持ちは一番大切で強い。お互いをかばって、お互いのために動く。特待生の条件にピッタリだと思うね」
「え……」

思わず私たちは顔を見合わせてしまう。

「最後に聞こうか。君たちはこのクエストやもっと言えばこの仕事が、嫌にならないかい?」
「嫌……?」
「AIとの対峙は恐らくずっと終わらない。相手の姿も見えないことがほとんど。なのに手口は巧妙化して終わりはない。ずっと向き合わなければいけない」

確かにその通りだ。でも……

「私は……最初は学食代目当てだったんです。けれど、クエストや学校生活を通して、人間味の良さをたくさん実感しました。同時に、AIの便利さも実感しました」
「悪いことには相対しなければいけないけれど、AIとはいい方向で共存できる社会の一員として頑張っていきたいです」
「嫌になることもあるかもしれませんが、大切な人と支え合えば、ずっとやっていけると思います」

「そうか……その通りだね」

今宮くんも隣で頷いてくれている。
終わったら気持ちを伝えよう。大切だって伝えよう。

「ふむ、史郎。お前から言いなさい」
「はい……コードネームNo.72今宮那都、コードネームNo.30佐倉未桜。特待生管理室長・椎名史郎の名のもと、特待生試験、合格とします」

合格……!2人で!やったよ今宮くん!
勢いあまって今宮くんに抱きついてしまった。
けれどすぐに、今宮くんも私の背中に手をまわしてくれた。

……ん?あれ……?

「特待生管理室長……?」
「私も先生ではないけど、学校の関係者なの。国の上の機関と、この学校との橋渡し役ってところね」
「え!?」
「鑑定士になるには私の元を経て、国に申請するのよ。なっちゃんこれからもよろしくね♡」
「げ……」

こうして、私たちは晴れて2人で特待生となることができた。

……ただ私の方は、常々先生たちに成績のことを心配される日々となる。
私の心配ではなく、特待生の価値を下げるな、という観点らしい。

今宮くんからのスパルタ勉強はずっと続くこととなった……
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