"Mr&Mrs Ogiwara detective office" 事件簿1
着物を着て香水をつけて髪の毛をアップにしていたので、前髪も上にあげていて顔がよく見えたのですぐにわかった。
さよは503号室に入って行った。翔は気付かれないように見ていたのだ。
さよが部屋に入ってしまうと、ドアの前まで行ってみたが表札はなかった。
エントランスのポストにも名前は書かれていなかった。
でも間違いないあれはさよだった。
翔は3年以上必死で働き周りの人に助けられたし、迷惑も掛けた。
そしてつい今月で完済したのだ。その日の夜は智子と焼き肉を食べに行った。
この3年間で初めての焼肉だった。
そんな時にさよを見つけた。これまでも探そうとしたこともあったが、それより働いて借金を返済しなければいけなかったので、そんな事に割く時間が無かった。
この半年余りは初めて週一日の休みを取る贅沢を自分に許した。その日だって夜中の警備の仕事には行っていたのだ。
そうして必死で働いてきたその元凶はぬくぬくとこんなマンションに住み着物を着て高そうな香水の匂いをさせていた。
智子には香水も買ってやったことは無かった。きっとそんな物を欲しがらないだろうけれど翔はさよを許せなかった。
自分の気持ちを蔑ろにしてさよの代わりに借りた300万円と、あろうことか翔の名前で闇金から250万ものお金まで借りて翔をどん底に落として逃げて行ったのだ。
翔は配達中に何度もさよのマンションに行ってみたが、いつも留守だったのだ。
自分はあってどうしたいのか翔にははっきりしていなかったが、とにかく会わないと気が済まなかった。
それから何度目かの日さよは家にいてインターフォンを押すと配達員の制服を着ている翔を危ぶむ事もなくドアを開けた。
翔は素早く玄関に身を滑り込ませると、さよはびっくりした様だったが声を上げることは無かった。
翔は帽子を取ると
「山野辺翔だ。随分久しぶりだな。さよ。話を聞かせて貰おうか」
「あら、配達員さんだと思ったわ。どこかで手に入れてきたの?似合うじゃない」
平気な顔でそんな事を言うさよに呆れた。
「これは本物でここで働いているんだ。配達が終わったら夜中の警備の仕事があって、休みの日の一日は朝から夜まで、コンビニで働いている。誰かさんの所為で300万どころか550万の借金があるからだ。君は一銭も返してくれてないが…」
「あらあ、それはごめんなさいね。今ちょうどコーヒーを飲んでいた所なの。翔も飲む?とりあえず入ってよ」
翔はさよに誘われるままリビングのソファーに腰かけた。
今入れたてだろう珈琲をテーブルの向かいに置いたまま、さよはキッチンに入ってコーヒーを入れている。
翔はテーブルに置かれたコーヒーを凝視している。
ポケットには乳剤のニッカリンの薄め液が入った小さなボトルが入っている。
これをさよのコーヒーに数滴たらせば、飲んだとたんに死ぬだろう。
さよは503号室に入って行った。翔は気付かれないように見ていたのだ。
さよが部屋に入ってしまうと、ドアの前まで行ってみたが表札はなかった。
エントランスのポストにも名前は書かれていなかった。
でも間違いないあれはさよだった。
翔は3年以上必死で働き周りの人に助けられたし、迷惑も掛けた。
そしてつい今月で完済したのだ。その日の夜は智子と焼き肉を食べに行った。
この3年間で初めての焼肉だった。
そんな時にさよを見つけた。これまでも探そうとしたこともあったが、それより働いて借金を返済しなければいけなかったので、そんな事に割く時間が無かった。
この半年余りは初めて週一日の休みを取る贅沢を自分に許した。その日だって夜中の警備の仕事には行っていたのだ。
そうして必死で働いてきたその元凶はぬくぬくとこんなマンションに住み着物を着て高そうな香水の匂いをさせていた。
智子には香水も買ってやったことは無かった。きっとそんな物を欲しがらないだろうけれど翔はさよを許せなかった。
自分の気持ちを蔑ろにしてさよの代わりに借りた300万円と、あろうことか翔の名前で闇金から250万ものお金まで借りて翔をどん底に落として逃げて行ったのだ。
翔は配達中に何度もさよのマンションに行ってみたが、いつも留守だったのだ。
自分はあってどうしたいのか翔にははっきりしていなかったが、とにかく会わないと気が済まなかった。
それから何度目かの日さよは家にいてインターフォンを押すと配達員の制服を着ている翔を危ぶむ事もなくドアを開けた。
翔は素早く玄関に身を滑り込ませると、さよはびっくりした様だったが声を上げることは無かった。
翔は帽子を取ると
「山野辺翔だ。随分久しぶりだな。さよ。話を聞かせて貰おうか」
「あら、配達員さんだと思ったわ。どこかで手に入れてきたの?似合うじゃない」
平気な顔でそんな事を言うさよに呆れた。
「これは本物でここで働いているんだ。配達が終わったら夜中の警備の仕事があって、休みの日の一日は朝から夜まで、コンビニで働いている。誰かさんの所為で300万どころか550万の借金があるからだ。君は一銭も返してくれてないが…」
「あらあ、それはごめんなさいね。今ちょうどコーヒーを飲んでいた所なの。翔も飲む?とりあえず入ってよ」
翔はさよに誘われるままリビングのソファーに腰かけた。
今入れたてだろう珈琲をテーブルの向かいに置いたまま、さよはキッチンに入ってコーヒーを入れている。
翔はテーブルに置かれたコーヒーを凝視している。
ポケットには乳剤のニッカリンの薄め液が入った小さなボトルが入っている。
これをさよのコーヒーに数滴たらせば、飲んだとたんに死ぬだろう。