僕の夏休みだけの亡霊(読:ヒーロー)

出会った二人

 次の日もその柴犬はやってきた。僕は昨日と同じように水を入れてあげた。
 よく見ると、その犬は痩せ細っていた。野良犬にエサをあげてはいけません、といつか先生が言っていた言葉を思い出す。この子がお腹を空かせたまま、死ぬのを待つか、ここでエサをあげてあげるか。僕は後者を選ぶことにした。
 僕は家の鍵を閉めて、昔お父さんが使っていたという古い自転車に乗った。おばさんとおじさんは夕方までお仕事だからこっそり行くことにした。
 ギコギコと自転車は音を鳴らし、キューとブレーキをかければ音が鳴る。古いけど、乗れること自体がありがたい。家では自転車なんか買ってくれないから。
 坂を下ると、生ぬるい風が当たる。夏は嫌いだけど、夏休みは一生続けば良いのになと思う。そうすればずっとここにいられるし...。

 スーパーは僕の家の近くの所よりも小さかった。
 ポケットからきんちゃく袋を取り出す。中には五百円が入っている。毎月使わずに貯めていたお金だ。
 スーパーには何種類かのドッグフードがあった。僕は柴犬の写真が載ったドッグフードを買うことにした。値段は450円。お小遣いがなくなるのはすごく嫌だけど、あの犬が幸せになるなら良いかな。

 買い物が終わって、行き通った道を自転車で漕ぎ、家に着いた。
 庭にはあの柴犬が座っていた。ココが好きになったのかな、おばさんたちに怒られないかな。
 僕は水を入れていた所にエサを少しだけ入れてみた。柴犬はクンクンと匂いを嗅いで、一口食べて、また匂いを嗅いで、それでまた少しだけ食べて…。柴犬は少しずつ食べた。
 少しすると、柴犬は山の方へと歩いて行った。
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