僕の夏休みだけの亡霊(読:ヒーロー)
柴犬はその次の日も、そのまた次の日も家に来た。
それから一週間が経って、久しぶりに山に登ることにした。
山を登ると言っても、昔おばあちゃんが山の上で育てていたみかんを取りに行くために、整備された道を歩いて山頂に行くだけだけど。
恵美おばさんがついでにピクニックしておいでと言ってくれ、サンドイッチとオレンジジュースとおにぎりを持たせてくれた。
お母さんやお父さんと暮らしていた頃は、サンドイッチもおにぎりもたくさん作ってくれて、たくさん食べて、オレンジジュースもたくさん飲ませてくれた。なのに最近は食べていなかったから、僕はいつも以上に張り切っていた。
蝉の鳴き声が聞こえ、鳥の羽ばたく音が聞こえ、スズメのさえずりが聞こえる道を僕はひっそり歩く。
確かあの角を曲がると木の株があったはず。何も生えてなければ、僕はそこでいつも休憩していた。今回もそこに座って、飲み物を飲もう、、そう思ったのに…。
その株の上には同い年ぐらいの女の子が座っていた。一体誰だろう。
僕がゆっくりと歩いていると、その子は僕に気づいて大きな目を見開いた。
「あなた、、、だれ?」
女の子は立ち上がった。茶色のリボンがついた白色の服に、黒いスカートを履いている。肩より少し長い髪と白い肌。この子は確実に見たことがない人だと思う。
「あなたこそだれ?」
「私は夏希。今はお散歩に来てるんだけど」
「僕は悠太です。今から山頂に向かって歩いてるんだ」
そう言うと彼女はふーんと言った。どういう意味なんだろう。
「じゃあ私も山頂までついて行ってもいい?」
「う、うん」
じゃあ、と言ってお互い去るのかと思ったら、彼女は僕についてくるみたいだ。
「よかったー。じゃあ、悠太って呼ぶから夏希って呼んでよ」
「分かった。夏希は何年生なの?」
「私はー一応六年生かな。悠太は?」
一応ってどういうことなんだろう。背丈がそれほど小さい訳でもないのになぁ。
「僕も一緒」
「そっか。悠太ってここら辺の学校?」
「ううん。僕は隣の市から来てて、今は親戚の家に来てるんだ。夏希はこの近くに住んでるの?」
「違うよ。私はここから遠い所。遠い遠い遠い所」
夏希はなんだか少しだけ悲しそうな顔をして空を見上げた。僕も同じように空を見上げると、鳥の群れが飛び交い、雲一つない青空が広がっていた。
いつの間にか僕たちは頂上の近くに到着していた。
「あっ、あれ頂上!悠太早く行こうー」
夏希は頂上を指さした後、走って頂上まで駆け上がる。僕も負けないように夏希の後を追う。木々たちは風に揺られて、ザワザワと音を立てている。
頂上からの景色はいつも通り綺麗だ。山の周りは田んぼが多くて、その向こうには建物がたくさんあって、その向こうには海がある。
僕は持ってきた食べ物とジュースを地面の上に広げる。レジャーシートでもあれば良かったな…。
「これさ、せっかくだし一緒に食べようよ」
「えっ!いやいやー悪いよー。それお母さんか誰かが悠太のために作ってくれたんでしょ?」
「うーん、まあそうなんだけど…。ほら、誰かと一緒に食べた方が美味しいし、せっかく仲良くなれたんだしさ」
夏希は首を振るけど構わずに、僕はおにぎりを渡した。僕も袋から自分の分を一つだけ取った。
「ほんとにいいの?なんか申し訳ないな〜」
「気にしなくていいからさ。一緒に食べようよ。せーの」
「「いただきます」」
僕は一口食べた。中身は…鮭だ。隣の夏希の中身は、ツナマヨみたいだ。
「このおにぎりすごい美味しいね。こんなおにぎり食べたの初めて。もうほっぺが落ちそう」
そう言って夏希はほっぺをぷにぷにと触る。ほっぺは落ちないよ、と心の中で答える。そんな夏希の姿を見ていると、僕も自然と頬が上がる。
その後にサンドイッチとジュースもはんぶんこしてお昼ご飯を食べ終わった。
「ごちそうさま。悠太ありがとう。お母さんにもありがとうって伝えといてね。」
「うん、分かった」
夏希はごろんと後ろに寝転んだ。周りには少しだけ草が生えている。多分智樹おじさんが休みの日に刈ったりしてくれてるだろう。僕も夏希と同じように寝転ぶ。
「あっ、飛行機雲」
僕は空の白い線を指差す。僕はこの地域も飛行機が飛ぶんだなぁと思う。隣に座る彼女はどんなことを考えてるんだろう。不思議と、そんな考えになった。
「ほんとだー!私も飛行機乗りたかったなー」
「乗りたかった、、ってどういうこと?」
「あー。ううん。間違えた間違えた。乗ってみたいなーってことだよ、そうそう。」
夏希は焦りながら、ハハっと笑う。間違えただけ、なんだよね。
「てか、もう帰らないと。私今日用事あるんだ。」
じゃあねー、と言って夏希は逃げるように来た道とは違う方へと走って行った。
いったい夏希はどこに住んでるんだろう。
僕も柴犬の存在を思い出し、広げていた物を片付けて、山を降りた。
それから一週間が経って、久しぶりに山に登ることにした。
山を登ると言っても、昔おばあちゃんが山の上で育てていたみかんを取りに行くために、整備された道を歩いて山頂に行くだけだけど。
恵美おばさんがついでにピクニックしておいでと言ってくれ、サンドイッチとオレンジジュースとおにぎりを持たせてくれた。
お母さんやお父さんと暮らしていた頃は、サンドイッチもおにぎりもたくさん作ってくれて、たくさん食べて、オレンジジュースもたくさん飲ませてくれた。なのに最近は食べていなかったから、僕はいつも以上に張り切っていた。
蝉の鳴き声が聞こえ、鳥の羽ばたく音が聞こえ、スズメのさえずりが聞こえる道を僕はひっそり歩く。
確かあの角を曲がると木の株があったはず。何も生えてなければ、僕はそこでいつも休憩していた。今回もそこに座って、飲み物を飲もう、、そう思ったのに…。
その株の上には同い年ぐらいの女の子が座っていた。一体誰だろう。
僕がゆっくりと歩いていると、その子は僕に気づいて大きな目を見開いた。
「あなた、、、だれ?」
女の子は立ち上がった。茶色のリボンがついた白色の服に、黒いスカートを履いている。肩より少し長い髪と白い肌。この子は確実に見たことがない人だと思う。
「あなたこそだれ?」
「私は夏希。今はお散歩に来てるんだけど」
「僕は悠太です。今から山頂に向かって歩いてるんだ」
そう言うと彼女はふーんと言った。どういう意味なんだろう。
「じゃあ私も山頂までついて行ってもいい?」
「う、うん」
じゃあ、と言ってお互い去るのかと思ったら、彼女は僕についてくるみたいだ。
「よかったー。じゃあ、悠太って呼ぶから夏希って呼んでよ」
「分かった。夏希は何年生なの?」
「私はー一応六年生かな。悠太は?」
一応ってどういうことなんだろう。背丈がそれほど小さい訳でもないのになぁ。
「僕も一緒」
「そっか。悠太ってここら辺の学校?」
「ううん。僕は隣の市から来てて、今は親戚の家に来てるんだ。夏希はこの近くに住んでるの?」
「違うよ。私はここから遠い所。遠い遠い遠い所」
夏希はなんだか少しだけ悲しそうな顔をして空を見上げた。僕も同じように空を見上げると、鳥の群れが飛び交い、雲一つない青空が広がっていた。
いつの間にか僕たちは頂上の近くに到着していた。
「あっ、あれ頂上!悠太早く行こうー」
夏希は頂上を指さした後、走って頂上まで駆け上がる。僕も負けないように夏希の後を追う。木々たちは風に揺られて、ザワザワと音を立てている。
頂上からの景色はいつも通り綺麗だ。山の周りは田んぼが多くて、その向こうには建物がたくさんあって、その向こうには海がある。
僕は持ってきた食べ物とジュースを地面の上に広げる。レジャーシートでもあれば良かったな…。
「これさ、せっかくだし一緒に食べようよ」
「えっ!いやいやー悪いよー。それお母さんか誰かが悠太のために作ってくれたんでしょ?」
「うーん、まあそうなんだけど…。ほら、誰かと一緒に食べた方が美味しいし、せっかく仲良くなれたんだしさ」
夏希は首を振るけど構わずに、僕はおにぎりを渡した。僕も袋から自分の分を一つだけ取った。
「ほんとにいいの?なんか申し訳ないな〜」
「気にしなくていいからさ。一緒に食べようよ。せーの」
「「いただきます」」
僕は一口食べた。中身は…鮭だ。隣の夏希の中身は、ツナマヨみたいだ。
「このおにぎりすごい美味しいね。こんなおにぎり食べたの初めて。もうほっぺが落ちそう」
そう言って夏希はほっぺをぷにぷにと触る。ほっぺは落ちないよ、と心の中で答える。そんな夏希の姿を見ていると、僕も自然と頬が上がる。
その後にサンドイッチとジュースもはんぶんこしてお昼ご飯を食べ終わった。
「ごちそうさま。悠太ありがとう。お母さんにもありがとうって伝えといてね。」
「うん、分かった」
夏希はごろんと後ろに寝転んだ。周りには少しだけ草が生えている。多分智樹おじさんが休みの日に刈ったりしてくれてるだろう。僕も夏希と同じように寝転ぶ。
「あっ、飛行機雲」
僕は空の白い線を指差す。僕はこの地域も飛行機が飛ぶんだなぁと思う。隣に座る彼女はどんなことを考えてるんだろう。不思議と、そんな考えになった。
「ほんとだー!私も飛行機乗りたかったなー」
「乗りたかった、、ってどういうこと?」
「あー。ううん。間違えた間違えた。乗ってみたいなーってことだよ、そうそう。」
夏希は焦りながら、ハハっと笑う。間違えただけ、なんだよね。
「てか、もう帰らないと。私今日用事あるんだ。」
じゃあねー、と言って夏希は逃げるように来た道とは違う方へと走って行った。
いったい夏希はどこに住んでるんだろう。
僕も柴犬の存在を思い出し、広げていた物を片付けて、山を降りた。


