僕の夏休みだけの亡霊(読:ヒーロー)
「なんだろうな、おにぎりを食べると、自然に胸があったかくなるんだよな〜」
夏希はいつの間にか止まった涙を拭き取って、空を見上げる。
「私には分かるよ。悠太が山へ行くなら、怪我しないように、とか、いっぱい楽しんでね、って優しい優しい叔母さんから悠太への思い。…つまり愛情がたっくさんおにぎりに詰め込まれてるの」
「ほんとに?」
なんだか次は僕が泣きそうになってきた。目の奥が少しだけ熱くなってきて、上を見上げて見たりしてみる。
「うん。だって大切に思ってなかったら愛情なんて込めないでしょ?それに最初会った時の悠太は幸せそうだったよ」
多分来たばっかりで、夏休み前のことを忘れて、今の生活でいっぱいで、でもそれが楽しくて…。
こんなにも僕のことを考えて話してくれることが嬉しくて、嬉しくて...空を見上げたって涙が出てきてしまった。
「でも...」
「何泣いてんの?でもでも、言っても仕方ないじゃん」
ほら悠太は良い奴なんだよ、って僕の背中を優しく叩く。
「悠太は優しい子だね」とお母さんが言って、頭を撫でてくれたことを思い出す。夏希は僕にどれほど良い言葉をくれるんだろう。
「分かった。相談してみる」
「うん。それが一番だよ」
夏希にそう言われて僕の高ぶった気持ちは少しだけ落ち着いた。
「あとさ、僕毎日知らない犬にエサあげてるんだけど、そのこともちゃんと伝えた方がいいよね?」
夏希は少しだけ驚いた表情をした後、すぐに元の表情に戻した。
「うん、ちゃんと伝えた方がいいと思うよ」
「だよね、今日はいろんな話聞いてくれてありがとう」
僕はそう言って立ち上がった。
「今から家行くの?」
同じように立ちあがった夏希が僕に尋ねる。
「うん。夏希に元気をもらったから」
僕の中にある臆病な気持ちはいつのまにかどこかへ消えていた。
叔父さんと叔母さんにきちんと相談するって決めたから。


